[2007.10.1更新]

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2007年10月の5冊

 

 

『大人は判ってくれない』[映像資料] [請求記号: DVD//20]

フランソワ・トリュフォー監督 ポニーキャニオン

 前回は内田樹の『子どもは判ってくれない』 を取り上げたので、今回はその題名の元になった映画『大人は判ってくれない』 を取り上げます。フランソワ・トリュフォーは27歳のとき、長編第一作としてこの映画を作り、 1959年のカンヌ映画祭で最優秀監督賞を受賞し、一躍ヌーヴェル・ヴァーグと称される新しい映画潮流の旗手となりました。 トリュフォーはその後、ちょっぴりユーモラスで、それでいて美しくも哀しい恋愛映画を多数作りましたが、 彼が生涯こだわりをもって描こうとした本当のテーマは「子どもの不幸」ではなかったかと、私は思っています。 親に愛されず、家出を繰り返し、朝には牛乳を盗んで飲み、夜には好きな映画のスチール写真を盗んで逃げる少年だったトリュフォーは、 ついには父親によって警察に突き出され少年鑑別所に送られます。『大人は判ってくれない』は、自らのそうした子ども時代の 「不幸」をセンチメンタルな回想や憤り、告発の視点から描くのではなく、 まさに子ども自身がそのときそのように生きていた瞬間を映像として提示することに成功した、稀な映画です。
 映画狂少年トリュフォーは、その後、映画を通して他者への信頼や世界の温もりに目覚め、 自らがその創造に携わる道を歩むことになります。山田宏一 『 トリュフォー、ある映画的人生』 (平凡社)を読めば、 傷つきやすくやわらかな感性の人であったトリュフォー自身とその映画が、きっと好きになることでしょう。

(学術情報センター長 加藤義信(文学部児童教育学科))

 

『甲子園への遺言:伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯』 [請求記号: 783//302]

門田隆将著 講談社

 皆さんは,小説が原作となっている映画をどう観ますか.「観てから読むか,読んでから観るか」です. 今回は機内上映で意識せず観てしまった野球少年達の物語「バッテリー,東宝系,2007」からコメントを始めます (原作を最後まで読もうと思いました).原作(あさのあつこ著,角川文庫)は,20代〜40代の女性に人気があるとのことで, NHKクローズアップ現代(2007年8月1日放映)で特集されました.観た人も多いと思いますので, 今回は野球を題材にしたお気に入りの書籍をいくつか紹介しようと思います.
 先ずは今月の一冊です.私は本を読みながら涙が止まりませんでした.この本の主人公は, 約30年にわたってプロ野球の打撃コーチを務めた後,高校の社会科教員として教壇にあがり甲子園を目指した人物です. 打撃コーチとしては,創意工夫と洞察力によって,選手にあった独特の練習方法を考案し,落合(中日監督), イチローなどの選手を育てました.研究室で学生の指導に迷ったときには,読みかえそうと思います.
 次に野球の楽しみ方が違ってくる本です.山際淳司氏の傑作「江夏の21球」は,日本シリーズでの名場面をインタビューで整理し, 一球の重みを語っています[1].この傑作集にはボクシング,テニスなどのスポーツも題材になっています. スポーツの見方が変わると思います.[2]は数理科学の基礎を,野球のデータを分析しながら,説明しています. いつかこんな楽しいテキストを書くことができたらと考えています.[3]は,数理科学の研究成果を駆使して, 他チームと違う視点で選手を集め,総年俸が低くとも,強いチームを作るという痛快な話です.

[1]山際淳司,『スポーツ・ノンフィクション傑作集成』,文藝春秋,1995.
[2]J. アルバート, 『 メジャーリーグの数理科学(上・下)』 ,シュプリンガー数学リーディングス) ,2004.
[3]マイケル・ルイス, 『 マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』 ,講談社,2004.

(学術情報センター長補佐 奥田隆史(情報科学部地域情報科学科))

 

『The best of Muddy Waters』[録音資料] [請求記号: CD//105]

Muddy Waters MCA Records

 日本の、いえ世界の大衆音楽に、アメリカ南部産のルーツ・ミュージックが大きな影響を与えたことは、よく知られています。 とくに60年代を席巻したあのビートルズや、ローリング・ストーンズなどの音楽に、ブルース(淡谷のり子さんのではない)が 色濃く影を落としていることは周知のことでしょう。今回は、ビートルズまでは聴くけれど、それより濃い音楽は、という方向けに、 いささか私的独断的にアルバムや関連図書をお勧めします。
 ブルースといえば、良くも悪くも「泥臭い」というイメージが着いているようですが、そのイメージを打破する1枚がB.B.キング 『ライヴ・アット・ザ・リーガル』です。64年シカゴ・リーガル劇場でのライヴ盤。超名盤なので、 名前は聞いたことがある人が多いかも。「キング・オブ・ブルース」と呼ばれる彼の都会的で洗練された名演が聞けます (ブルース・オタクからはその洗練さが嫌われているようですが)。
 続いての1枚といえば、B.B.キングと並ぶ知名度はあるかと思いますが、シカゴ・ブルースの大御所マディ・ウォーターズの 『ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ』を押しておきます。 ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンなどその後のロックに大きな影響を与えたという点では、 彼の役割はB.B.キングにおさおさ劣るものではありません。このアルバムに収録されている 「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」、ローリング・ストーンズが 『イングランズ〜ニューエスト・ヒット・メイカーズ』でそのコピーを披露していますが、聞き比べると、 大西洋を渡ると文化というものはかくも変容するものだなぁ、と大変興味深いものがあります。
 次にそのローリング・ストーンズのキース・リチャード(ギタリスト)を驚かせたロバート・ジョンソンの 『コンプリート・レコーディングス』を。キース・リチャードが彼のギターを聞いて「これは一人で演っているのか?」 と言ったとか言わなかったとか(すいません、典拠あやふやです)。ブルース・ギターのテクを手に入れるため悪魔に魂を売ったと 言われる彼の面目躍如たるエピソードです。実際そのギタープレイはひたすら溜息ものです。 ただし、音源が古い(彼は1938年に女性問題が原因で暗殺されます)ので、それが残念。
 ギタリストといえば、エルモア・ジェームスの名前も逸するわけにはいけないでしょう。 彼の演奏に特徴的な冒頭の3連スライド・ギターのリフ(ビートルズの「レヴォリューション」冒頭のあれです)は、 これも後代のロッカーたちに大きな影響を与えました。 『ダスト・マイ・ブルーム〜ザ・ヴェリー・ベスト』をここでは上げておきます。
 あと、いろいろと名盤・名演はたくさんあるのですが、歴史的にブルースを俯瞰してみたい方のためにオムニバス盤 『RCAブルースの古典』と『ストーリー・オブ・ザ・ブルース』は必聴かと思います。
 こうしたブルース関連の図書には、CD『ストーリー・オブ・ザ・ブルース』の元になったポール・オリヴァーの 『 ブルースの歴史』は必読の関連図書ですが、 最近ではジェームス・M・バーダマン・村田薫著『 ロックを生んだアメリカ南部』が、 アメリカ南部の歴史とも絡めながら、ブルースを始めとするルーツ・ミュージックの展開過程を追っており、 大衆音楽からアメリカ史を学ぶうえで手際のよい1冊かと思います。
 秋の夜長、ブルースを聴きながら、こうしたアメリカ文化史の本を手に取るのは如何でしょうか。

【おまけ】さて、世界の大衆音楽に大きな影響を与えたブルースを始めとするアメリカのルーツ・ミュージックですが、 その後の展開を知るためには、何といってもボブ・ディランの名前と彼の曲を落とすことは出来ないでしょう。 デビューアルバム『ボブ・ディラン』から始まり、バイク事故で活動をしばらく停止する間に出した60年代の各アルバムでは、 彼がブルースやゴスペルなどのルーツ・ミュージックを咀嚼し、より普遍的な音楽を作り出していった過程が伺え、 これらは60年代以降のアメリカ大衆音楽の歴史的資料にもなっているかと思います。余裕があったら是非謹聴を。 なお、ボブ・ディランについては、自伝『ボブ・ディラン自伝』が最近出版されました。 これもアメリカ文化史の貴重な資料でしょう。

(学術情報センター図書館 米井)


 

『Tokyo style』 [請求記号: 748//277]

都築響一著 筑摩書房 (ちくま文庫)

編集者でもある著者が1993年に初めて出版した写真集。東京の、普通の人々が暮 らす「安く居心地のいい部屋」の写真を集めています。それぞれの部屋が持つた くさんの物たちや、その存在感に圧倒されます。細部までしっかりと写っている ので、部屋の持ち主が集めた品物をじっくり鑑賞したり、本棚や床に並んだ本や CDのタイトルを読んだりすることができ、それがとても楽しいです。10年以上 たった現在、古びて感じるものもあり、そうでないものもあり。でも、生活って 変わらずこういうものだよなぁーと感じさせてくれます。

(学術情報センター図書館 石野)


 

『センス・オブ・ワンダー』 [請求記号: 404//52]

レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳 新潮社

 この間までの強い日の光はゆるみ、生命力にあふれていた緑が色を変えていきます。夏から秋へと移っていく時期というのは、 「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」が春におとらず活発になる時期ではないでしょうか?
 この本は海辺や森で甥のロジャーと共に自然を楽しんだ様子を通じて、自然の中の生命に驚嘆する感性をはぐくみ強めてほしい というメッセージを送っています。嵐の夜の海、雨の中の森、鳥の渡り、満天の星の中に身を置くことは、 わくわくすると同時に癒される時間でもあります。
 一方で、「センス・オブ・ワンダー」は学問にも必要ではないかと思います。疲れたり、行き詰ったりした時には、 地球の美しさにふれるという最も素朴な「センス・オブ・ワンダー」の回路を開くことで、新しい道が見つかることでしょう。
 「自然にふれるという終わりのないよろこびは、けっして科学者だけのものではありません。大地と海と空、そして、 そこに住む驚きに満ちた生命の輝きのもとに身をおくすべての人が手に入れられるものなのです。」
 著者レイチェル・カーソンは、「環境の汚染と破壊の実態を、世にさきがけて告発した」といわれる 『 沈黙の春』で知られています。

(学術情報センター図書館 平田)