[2009.3.2更新]

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2009年3月の5冊


 

 

『図書館―愛書家の楽園―』 [請求記号:010.2/Ma43]

アルベルト・マングェル著 白水社 2008年

 2年間、学術情報センター長として、図書館について考える機会が絶えずありました。「大学図書館は誰のための、何のための施設か」という問い方をすれば、答えは自明で、誰もが同じように答えるでしょう。私も職責上、「大学図書館には三つの大切な機能がある。教育研究支援機能、資料保存機能、文化発信機能であり、これをバランスよくいかに充実させるかが課題だ」と公の席で何度も発言してきました。もちろん、このことに少しも嘘はなかったし、そのために微力ながら尽力してきたつもりです。しかし、心の片隅ではこのような図書館の捉え方にかすかな違和感を覚える部分があったのも事実です。
 昨年秋に発刊された「図書館―愛書家の楽園―」という本と出会って、私は自分の違和感が何であったかに気付きました。「愛書家の楽園」、そうです。これこそ図書館の原点を言い当てている定義ではないでしょうか。この本を紐解くと、歴史的にも、図書館は機能的な問い(何の役に立つのか)だけによって、その存在の正統性が承認されてきたわけではないことがわかります。役に立つか立たないかと問う以前に、図書館は少なからぬ人々にとって広大な知識の世界に開かれたワクワクする空間でした。紀元前三世紀にエジプトの地に建てられたアレキサンドリア図書館は世界最初の大図書館として有名ですが、その創設の動機は機能性という観点からかけ離れたところにあったといいます。アレキサンドリア図書館以前にも古代世界には、法的な書類や文書記録を集めた公的な書庫が各地に存在していました。しかし、特定の目的のために文書を保管する必要性よりも、世界の多様性についてすべてを知りたいという欲求=好奇心が勝ったからこそ、「書庫」から「図書館」へという飛躍が生まれたのでした。
 起源がそのような点にあることを考えると、図書館は何より知的好奇心が自由に羽ばたく楽園でなければなりません。本書は、そうした楽園の創造のために(ときに異常な)情熱を傾けた愛書家たちの物語で埋まっています。アレキサンドリア図書館に地上のありとあらゆる書物を集めようとしたプトレマイオス王、大英図書館誕生のために一生を捧げたパニッツィ、2003年のクリスマスに崩れた本の山の下敷きになって3日目にやっと消防士に救出されたニューヨーカー、どの愛書家の逸話も、本好きには何か自分に思い当たるところがあって、興味がつきません。インターネット時代の図書館のあり方を含めて、21世紀の「楽園としての図書館」について考えてみたいすべての愛書家に、この本を薦めます。

(学術情報センター長 加藤義信(文学部児童教育学科))

 

『スプリングスティーンの歌うアメリカ』 [請求記号:767.8/Sp8]

五十嵐正著 音楽出版社 2009年

 スタジオジブリの小冊子 『熱風』2009年1号の特集は「日本人はハリウッド映画を見なくなったのか」でした.この特集では,米映画が日本で不人気になっている理由について色々な方が説明しています(個人的にはハリウッド映画を観ています).その中で,印象的だった論文は内田樹氏の“日本人の映画の見方はどう変わったか”でした.この論文によると,「日本人は内向きになった」ため,日本の観客は,映画館のスクリーンに「絵空事」を観ることよりも,「自分たちのふだんの日常生活と地続きの見慣れた風景」を好むようになってきているという指摘でした.そのため,日本人のハリウッド映画への関心が低下しているのではないかという指摘でした.先月お薦めした『パラダイス鎖国 : 忘れられた大国・日本』にも同様な指摘がありました.
 さて,ハリウッド映画への関心は薄れてはきているようですが,同じ米国関連でもオバマ大統領への関心は高い状態が続いているようです.書店にはオバマ大統領関連の書籍は山積みとなり,彼の演説を集めたCD付き本はベストセラーになっています.就任演説は原文と翻訳が新聞にも掲載されました.
 今月紹介する本は,オバマ大統領誕生と関連があるロックミュージシャンに関する本です.この本は,オバマコーナではなく,音楽コーナにありました.帯には“バラク・オバマ: 音楽を通して皆さんの人生に入りこみ,アメリカ庶民の物語を語る一握りの人たちがいます.ブルースス・プリングスティーンはそういった人たちの一人です.”とあります.一味違うオバマ本だと思い紹介しました.他の違う切り口でのオバマ本として,[1]ではアメリカのプロ野球(MLB)・バスケットボール(NBA)・アイスホッケー(NHL)の現役選手と支持候補者との関連が書かれています.[2]には,彼が大統領になったのは,「21世紀の教養」(「地球市民として具体的にどのように考え,どのようなアクションをおこしているのか?」という意識)を持っているからだという指摘 もあります.
 「21世紀の教養」として,アップルのCEOスティーブ・ジョブズが2005年6月スタンフォード大学で,卒業生に送る言葉という演説についても触れています(演説の結びは,“Stay hungry, stay foolish. ハングリーであれ,あほと呼ばれても良い”.).本学や国内の状況はわかりませんが,国外の大学生やエグゼティブの多くは聴いているようです.このような演説も聴いて,自分の意見を持っていた方が良い時代のようです.
 オバカを競っている時代でなさそうです.

[1]生島 淳,『大国アメリカはスポーツで動く』,新潮社,2008.
[2]大前研一,『「知の衰退」からいかに脱出するか?』,光文社,2009.

(学術情報センター長補佐 奥田隆史(情報科学部地域情報科学科))

 

ヤングアダルト小説 『天国までもう一歩』 [請求記号:933.7//628]

アン・ナ著 代田亜香子訳 白水社 2002年

 「ヤングアダルト小説」という名称をご存知の人は少ないと思う。そう言う私も1ヶ月前に始めて知った限りで、いかがわしい分野の小説かと錯覚したぐらい無知だった。
 ヤングアダルトは、英語でYoung Adulthoodの頭文字をとりYAと略することが多く、12歳から19歳ぐらいまでの若者のことを指し、その年代層を対象にした小説を「ヤングアダルト小説」と言う。
 1ヶ月前、連携公開講座の講師の人選に苦慮している時、出版社の知人に著名な講師の推薦について相談しようと思い、何気なく知人の出版社のホームページを開いた。目に飛び込んできたのが「ヤングアダルト小説」というコーナーだった。そこでは、角田光代さんが「ヤングアダルト小説(YA小説)」を推奨していて、海外のYA小説の翻訳家である代田亜香子さんの選書や翻訳力を高く評価していた。それがきっかけで、この本を読むことになった。
 「天国までもう一歩」。なんと言うタイトルなのだ。悲しそうな少女がカーテンの隙間から少し涙をためて外を見ている表紙が印象的だ。四歳の少女ヨンジュが天国だと思いこんで家族とともにアメリカにやってきて、大学入学までの間の出来事を書いたものである。
 久しぶりに涙しながら読んだ。「ヨンジュ頑張れ。」、「どうしてこんなことに・・・。」、「もう少しだよ。」やきもき、ドキドキする場面がリアルに描かれている。読んでいるうちにさびしい気持ちになり、久しく会っていない息子のこと思い出してしまった。と思っていたら息子から電話があったのは不思議だった。
 未知な分野の小説であったこともあり、新鮮な感動だけでなく、ピュアな気持ちになった。また、この小説と大切な時間を共有できた喜びが経過とともに重なっていった。出版社の知人が言っていた「YA小説は若者よりも大人が多く読んでいる。」の言葉に納得がいく。私と同様に、自分のYA期を思い出して主人公に感情移入したり、大切な人のことを思ったりすることが自然にでき、読みおえた後の高揚感がたまらないのだろう。
 毎度思うが、本との縁は不思議だ。偶然出合った本ほど発見や驚きが必ずある。

   実は、この本の翻訳者、代田亜香子さんとYA小説の翻訳家として有名な金原瑞人さんのクロストークが3月25日、長久手文化の家である。また、現在、本学でもYA本の展示会を行っている。「聞いて。」「読んで。」、YA小説と大切な時間の共有を体験してみてください。

(学術情報センター 春日井)

 

『ムーン・パレス』 [請求記号:933.7//146]

ポール・オースター著 新潮社 1994年

 アメリカの小説家ポール・オースターの描く、マーコ・フォッグという青年の青春物語。
 書き出し部分に次のようにあります。「僕は危険な生き方をしてみたかった。(略)結果的に、僕は破滅の一歩手前まで行った。(略)もしキティ・ウーという名の女の子がいなかったら、たぶん僕は餓死していただろう。(略)僕は車椅子の老人相手の仕事をはじめた。僕は自分の父親が誰なのかを知った。」これらの話がすべて次々とつながり、現実には起こり得ない偶然が連続します。冷静に考えると、あまりに都合が良過ぎるような気もします。しかし、一種のおとぎ話のようなこの物語は、そんなことは気にならない位魅力的です。
 この、自分の世界に入り込みがちな青年には、いろいろなエピソードがありますが、私の好きなエピソードを以下に紹介します。大学生だったマーコは、唯一の血縁者であるビクター伯父さんから譲り受けた千冊以上の本を抱えて、アパートで暮し始めます。その本が入ったたくさんの箱を組みあせて家具の代わりにしました。十六箱をベットに、十二箱をテーブルに、というように。伯父さんが亡くなると、マーコは伯父さんを悼み、箱を開けて本を読んでは、読んだ本を売って生活します。本を読み、売るたびに、次々と家具は消滅し、アパートは空虚な空間になるのでした…。
 これはまだ、物語の始まりです。その後マーコに何が待ち受けているのか。若い人に、若いうちに読んで欲しいです。

(学術情報センター図書館 石野)

 

『風の旅 : 四季抄』 [請求記号:914.6//194]

星野富弘著 立風書房 1982年

星野富弘さんは中学校の教諭でした。クラブ活動の指導中、けがをして手足の自由を失ってしまいました。この本には、その苦しみを受け入れた星野さんが口に筆をくわえて描いた花の絵と詩が収められています。春なので、「菜の花」と「たんぽぽ」がおすすめです。

(学術情報センター利用案内室 松原)