[2010.2.1更新]

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2010年1月の5冊


 

 

『鼻行類 : 新しく発見された哺乳類の構造と生活』 [請求記号:480/213]

ハラルト・シュテュンプケ著 日高敏隆, 羽田節子訳 博品社 1995年

 新しい世紀も10年目を迎えました。ゼロ年代と呼ばれる時をもいよいよ通り過ぎ、私たちはどこへ向かってゆくことでしょう。
 今回は、そのような時空を超えて、誰かの内側にぽっかりと浮かび続けているユートピア、「ハイアイアイ群島」に生きた「哺乳類の構造と生活」の観察記録をご紹介します。その哺乳類の名は「鼻行類」。"びこうるい"と発音します。鼻で移動するのを特徴としているので、そう名づけられているのですね。
 たとえば、私が心ひかれている【ダンボハナアルキ】は、「Sclerorrhina(硬鼻類)」族の亜族「Hopsorrhinida(跳鼻類、広義のトビハナアルキ類)」、「Hopsorrhinidae(トビハナアルキ科、狭義のハナアルキ科)」科の「Otopteryx(ダンボハナアルキ)」属1種と分類されています。「飛行能力」を持つ「巨大な耳」、「虹色」に輝く「毛皮」、そして、「たえずびくびく」しているがために命を落とすという繊細な特性までも記録されています。ほかにも、「鼻のなかの空気圧搾装置のために歩行中シュッシュッという音を出」す【オニハナアルキ】や、涙を流す【ナゾベーム】、鼻で「バッハのオルガン・フーガ」を演奏できる【ナキハナムカデ】など、いてもたってもいられない気持にさせられます。
 けれど、彼らも、そして彼らの生息していた島々も、今は海面下に沈んでしまいました。この群島は「日本軍の捕虜収容所から脱走」した「スウェーデン人」によって発見されたのち、「ハイアイアイ・ダーウィン研究所」が設立され、「国際的な調査団」が滞在するまでになっていたのですが、「秘密裡におこなわれた核実験」の過失からすべてが消滅してしまったのです。著者シュテュンプケ氏も、また。そして、本書を機知に富んだ名訳で私たちに届けてくださった本邦の動物学者、日高敏隆氏も先年11月に他界されてしまいました。
 彼らを象る魅力的な記録文は、緻密でユーモラスな挿絵とともにありますが、同趣向の書籍でもう一組お薦めしたいのが、『ノーダリニッチ島 K・スギャーマ博士の動物図鑑』と『同植物図鑑』です。「スギャーマ博士」による「魂の冒険」の行く先「ノーダリニッチ島」の動植物たちも、鼻行類に負けず劣らずの愛らしさと奇妙さです。
 ここまでお読みくださって、これらの原型についてピンと来た方もおられるでしょう。ハイアイアイ群島の研究所にもその名が冠されていた、ダーウィンのビーグル号航海ですね。今月20日(水)の午後、本学情報科学部の横田幸雄先生が、そのダーウィンの「進化論」をさまざまな事象に照らしてお話しくださいます。年の初めにふさわしく、私たちの存在そのものを新たな目で見つめることになりましょう。ぜひ、お運びください。

(学術情報センター長 宮崎真素美(日本文化学部国語国文学科))

 

『ダーウィンのミミズの研究 』 [請求記号:483.93/N72]

新妻昭夫 文 杉田比呂美 絵  福音館書店(たくさんのふしぎ傑作集) 2000年

 こんなタイトルですがこの本は絵本です。案外大人にも評判のいい絵本なんですよ。
 1842年ダーウィン33歳の時、彼はある実験に着手します。人の手が入らない牧草地の一角に白亜の破片をばらまきます。ミミズのふんが白亜の破片を埋めるはずだと信じて。
 29年後、白亜が見えなくなったその場所を62歳になったダーウィンが掘ってみると、果たして地表から17.5センチのところに白亜のすじが現れました。
 ミミズは地球の表面を耕していたということを30年かけて証明したのです。ダーウィンは実に粘り強い観察者でもありました。
 このことは、ダーウィンの遺作となった「ミミズの作用による肥沃土の形成及びミミズの習性の観察」という論文に詳しく書かれています。これは「ミミズと土」という書名で図書館も所蔵しています。
 ところで、これを読んでふと考えた日本の動物学者がおりました。この本の著者、新妻昭夫さんです。あの時17.5センチならば、今は何センチになっているのだろうか?
 1994年、ダーウィンが白亜の破片をばらまいてから152年後、ロンドンの知人にお願いし交渉すること3ヶ月、ついに許可が下り新妻さんはダーウィンが白亜の破片をばらまいた場所を掘ることになったのです。
 ところがどこに白亜を撒いたのかわからない。あっちこっちを捜す日本の動物学者、さてその結末は・・・
 私も思わず引きずり込まれた絵本でした。
 ここからは宣伝です。県大にも動物学者、横田幸雄教授がおられます。
 その横田先生が、現在図書館で行っている企画展示「こんなところにダーウィン・あんなところに進化論」にちなみ講演会を行います。
 時は1月20日(水)13時〜14時30分、場所は学術文化交流センター2階小ホール。
 「危険思想?!ダーウィンの進化論」というタイトルのこの講演。歯に衣着せぬ物言いの本学の動物学者はどのようなお話をなされるのでしょうか?  楽しみです。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 松森)

 

『北村薫の創作表現講義 : あなたを読む、わたしを書く』 [請求記号:080/Sh61/574]

北村薫著 新潮社(新潮選書) 2008年

 著者は昨年直木賞を受賞した現役の小説家です。女子大生の視点で描くミステリのシリーズでデビューし、繊細でリリカルな表現がお得意なので、以前は「女子大生なのでは?!」という説が流れたそうですが、実際は壮齢の男性です。
 この本は、北村さんが早稲田大学で創作表現について講義した内容を中心にまとめたものです。
 北村さんは、元高校の国語の先生だった方なので、さすがに教えるのがお上手ですし、現に創作の場に身を置いている者として語る言葉には説得力があります。
 後半には、講義だけではつまらないということで、ゲストを招いた回も収録されています。たとえば若い歌人を呼んで、学生のグループごとにインタビューさせたり。また大手出版社の編集者に、編集という仕事について語ってもらったり。この回は小説家と編集者の関係性も垣間見えたりして面白いです。
 文章を書いたり読んだりするのが好きな人におすすめです。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 川島)

 

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 [請求記号:210.6/Ka86]

加藤陽子著 朝日出版社 2009年

 本書は東大の日本近現代史の先生が中・高校生に講義した内容を一冊の本にまとめたものです。日清戦争から太平洋戦争までのそれぞれの過程や原因を最新の研究に基づいて、生徒たちとの問答形式でわかりやすく解説しています。
 戦後64年を過ぎた今、日本は戦争のない国となりましたが、最近過去の戦争の悲惨な光景を目にするたび、「何故日本は戦争をしなければならなかったのか」と疑問に思うようになり、この本を手に取ってみました。教科書では断片的にしかわからなかった一連の戦争の真相が見えてきます。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 金久)

 

『音楽の正体』 [請求記号:受入中]

渡邊健一著 ヤマハミュージュックメディア 1995年

 私は判ってしまったような気がしています…音楽の正体を? いえ、…それはこの本に書いてある(はずです)。私はこれを読んで、そこに記されていないもう一つ別の要素があるように、なんとなく判ったような気がするのです。
 それが何かは、この本を読んでみてのお楽しみ!? (皆さんもおそらく、その別の要素が何だか、気付くのではないでしょうか? Hinweis:私は"歳"のせいか、若い人たちの好みには…)
 この本が図書館に並ぶ時には帯はつかないので、帯に書かれた惹句を書いておきます。
"「レット・イットビーは終わらない」とは?
        「ユーミンの起こした革命」とは?
                遂に名曲、ヒット曲の謎を解明した!"

 さらに背の部分には、
        "よくわかる画期的音楽分析"
 これらの文言を目にするだけでも、読む気がそそられませんか?ぜひ一度読んでみてください。

(情報処理教育センター 河合)