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2011年7月の5冊


 

 

『定本徳川家康』 [請求記号:289.1/To36/]

本多隆成著 吉川弘文館 2010年

 徳川家康に関する評伝のまさしく「定本」、すなわち決定版としての位置を占める本です。著者の本多髏ャ(たかしげ)さんは家康ゆかりの静岡地方に拠点を据えて三十余年、手堅い実証研究で知られる、初期徳川氏研究の第一人者です。家康が浜松および駿府(現静岡市)にあって五か国(三河・遠江・駿河・甲斐・南信濃)を支配する仕組みと社会構造について基礎的な研究を積み上げられ、すでに三冊の単著を上梓されています。特に領国支配と領主財政に直結する五か国総検地の研究では大きな成果をあげています。その著者が、徳川氏とそれにかかわる諸大名の史料を博捜するとともに、改めて研究史を整理し直して、概説書として分かりやすく叙述したのが本書です。定本たる所以です。
 実は、近年、これまで正確に比定できていなかった戦国期や織豊期の史料のいくつかの年代が確定されてきています。それによって、関東惣無事令(家康が直接かかわる)を始めとした豊臣平和令の再検討が行われてきています。著者はそうした最新の研究成果も踏まえ、二〇〇九年までの成果は組み込み、批判的に検討するとともに、叙述に活かしたとしています。研究者としての真摯な態度に裏付けられた本書は、いうまでもなく単純な家康の評伝にとどまらず、戦国から織豊期をへて江戸幕府へとつづく通史としての内容も具備しています。東海地域や歴史に関心のある方にはお薦めの一冊です。

(学術情報センター長 大塚英二(日本文化学部歴史文化学科))

 

『新ネットワーク思考 : 世界のしくみを読み解く』  [請求記号:404//186]

アルバート=ラズロ・バラバシ著 青木薫訳 日本放送出版協会 2002年

現代社会では通信、ネットワーク技術によって結ばれ、ネットワーク上で情報は瞬時に広がり、世界中に情報は溢れています。情報ネットワークは現代社会のいろんな面に多大な影響を与える要素となり、物事はかつてない方式で進行していくことが増えています。これの現実を受けて人工的なネットワークだけではなくネットワークの本質、役割を再考せざるを得ません。この著書ではネットワークの視点から見たとき、独特な分析で自然、社会、ビジネスがどんなふうに見えるのかが示されています。著者はアメリカの大学で物理教授を務めて、インターネットから細胞内化学反応まで複雑ネットワークに共通してみられるつながりの構造発見という研究で知られて著書に述べられた独特な観点、知見より読者は知的興奮が味わえるでしょう。

(学術情報センター長補佐 田学軍(情報科学部情報科学科))

 

『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』  [請求記号:080/C44/128]

万城目学著 筑摩書房(ちくまプリマー新書) 2010年

 かのこちゃんは小学1年生の優しい女の子です。優しくて理解のあるお父さんとお母さん、それに年老いた犬の玄三郎と猫のマドレーヌ夫人と一緒に暮らしています。
 小学1年生のかのこちゃんにとって、世界は新しい発見や知らないこととの出会いに満ちています。次から次へと出てくるかのこちゃんの新しい疑問や不思議に、お父さんとお母さんはちゃんと向き合い、一緒に考えてくれるのです。
 茶柱が見てみたいかのこちゃんのために、十杯もお茶を入れて一緒に飲んでくれるお母さん。マドレーヌの散歩道を夏休みの自由研究にして、よその庭や塀の上を歩くかのこちゃんを見て近所の人から注意が来ます。けれど、一軒一軒近所の家を回って説明し、説得をしてくれたお父さん。あたたかい眼差しと愛情に包まれながら、かのこちゃんの毎日はまぶしく、光り輝いていくのです。
 そんなかのこちゃんの生活に少しだけ不思議な出来事が起こります。
そこにはやっぱり思わず涙がこぼれてしまうようなたくさんの優しさが隠れているのでした。

 ひとことでいうなら「ほほえましさ」です。ともだちと大人の真似をしたり、お父さんと手をつないでお祭りに行ったり、必ず訪れる誰かとの別れに涙したり…、こんな頃が自分にもあったと懐かしく、そしてどうしようもなく切ない気持ちになります。あったかくて懐かしい、そんな気分に浸りたい方にぜひお勧めの小説です。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 草間)

 

『単純な脳、複雑な「私」 : または、自分を使い回しながら進化した脳をめぐる4つの講義』』 [請求記号:491.371/I33]

池谷裕二著 朝日出版社 2009年

 この「単純な脳、複雑な「私」」という本は、脳科学研究者である筆者が、母校で、後輩の高校生たちに語った4つの講義をそのまま本にしています。内容は最新ですが、たくさんの事例や、わかりやすい言葉で説明されていますし、講義途中の学生の質問もそのまま書かれてますので、「脳科学」に難しいイメージを持っている人も、どんどん読めて、「脳科学」が身近に感じる事ができます。
 本の中で、筆者は、「自由意思」が存在するかどうか?という問いかけをしています。
 私たちは常に自分の意思で行動していると思い込みがちですが、実際は、脳の働きや、私たちが置かれている様々な環境などに意思は大きく左右され、何かを判断する時に、自分では自分の意思で決めているつもりでも、脳の中では、「無意識」の影響をうけている事が多くあります。例えば、脳は無意識に「顔の左半分を先に認識してしまう」という働きがあり、この働きにより、有名なモナリザの絵を「神秘な微笑み」と思ってしまうのだそうです。これは、モナリザの顔の左側が神妙な顔つきで、右側が笑っているため、ぱっと見では必ずしも笑っているように見えなく、じっと見るとほほえんでいるように見えるのだそうです。本の中で、モナリザの顔の左右反対の絵がでてきますが、確かに、これだと受ける印象が全く違い、よりはっきりと笑っているようにみえます。
 このように、本を読んでいくと、1つ1つの事例を自分で体感していく事ができ、人を好きになる感情さえも、「自分の意思」なのか「無意識に影響をうけた意思」なのか?など、どんどん深みにはまってしまいます。
 さて、「無意識」に影響されない「自由意思」は本当に存在するのか?ぜひこの本で確かめてみて下さい。

(情報処理教育センター 三宅)

 

『江戸時代の設計者 : 異能の武将・藤堂高虎』   [請求記号:289//1523]

藤田達生著 講談社 (講談社現代新書) 2006年

 本格的な暑さが続く季節になり、節電の取り組みも始めなければいけませんが、一人一人の努力が国の復興に直接反映できれば少し不便な生活でも不満に思わないのではないでしょうか。

 今から10年ほど前にも「平成の大合併」ということで国の中央集権から地方分権への合理的な国づくりが推進されていました。また、日本の歴史上では、戦国時代は究極の地方分権時代でもありました。その時代に7人もの主君に仕え、「世渡り上手」「築城の名手」と評される武将、藤堂高虎。高虎を知るための入門書がこの1冊です。

 高虎が徳川政権内部における数々の権力闘争に参画して将軍権力の確立に携わる様子や、自分の領国の仕置きに腕を振るうことにより、それまでの伝統的な国や郡とは違った藩を創り出し、藩領国制のモデルケースを樹立していく様子をわかりやすく紹介しています。
 三重県津市の津城本丸跡には、津藩初代藩主として高虎公の銅像があります。高虎に興味を持たれた方は、津に行く機会があれば一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 古屋)