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2011年11月の5冊


 

 

『尾張藩社会と木曽川』 [請求記号:215.5//Su38]

杉本精宏著 清文堂出版 2009年

 尾張藩社会とは、尾張藩の支配とかかわる社会全体の謂いで、地域的にも、ヒトの社会的つながりにおいても、それはかつての尾張国と同じではありません。尾張藩は美濃国の最大の領主でありましたし、信濃国や三河国、近江国にも所領を有していました。それらはすべて尾張藩社会を構成し、それにかかわる様々な人びと、集団、各種組織もこの社会の構成要素でした。また、尾張藩は御三家筆頭の地位にあって、隣接地域に対して特殊な立場と権限を有していました。そうした関係自体も藩社会の内実と見なすことができます。以上のような理解を前提に、尾張藩社会を研究しているグループがあります。
 著者の杉本精宏(きよひろ)さんは、この尾張藩社会研究会の中心メンバーとして、木曽川舟運や同普請等の研究を次々と公表してきました。本書はそうしたものを中心に、自治体史編さんでの検討なども織り交ぜながら、尾張藩社会の中で経済的にも政治的にも軸となるべき木曽川のあり方に焦点を絞り叙述したものです。実は、社会研究と銘打ちながら、本書は紛れもない地域研究としての実質を有していると評者は考えています。それは木曽川という軸を設けることで、それにかかわる地域連関・地域結合の実態を社会研究という曖昧な括りでなく展開しているからです。流域住民の生業・生活も活写され、地域としての成り立ちが木曽川を通して理解されます。これまで、濃尾地域に関するまとまった地域史研究はあまり刊行されていませんでしたが、本書によって、やっとそうした欲求不満が解消できそうです。この地域に関心のある方には必見の書だと思います。

(学術情報センター長 大塚英二(日本文化学部歴史文化学科))

 

『やさしい統計入門 : 視聴率調査から多変量解析まで』  [請求記号:417//889]

田栗正章 [ほか] 著 講談社 2007年

 最近一つのニュースが話題になっていました。米国航空宇宙局(NASA)の、上層大気調査衛星「UARS」が大気圏に再突入する見通しの発表でした。ニュースによると大気圏において衛星が燃え尽きず、日本を含む世界中の広い地域(北緯57度〜南緯57度まで)において一部破片が地上に落下するおそれがあり、人に障害を与えるリスクは3200分の一とされています。考えざるを得ないのは3200分の一の意味です。また、当日どう対応すればいいか悩んでいた人がいたでしょう。日常で例えば大学入試における偏差値など似たような問題はよくあります。偏差値に基づいた合格確率を理解するために当然偏差値の算出方法を知る必要があります。「やさしい統計入門」という本は比較的新しい統計学の読み物であり、多少に数学の知識が必要ですが、高校数学程度の知識があれば楽しんで読めるでしょう。 内容は幅広く、紹介する事例も興味深い内容であり、普段よくあって悩まされる統計データの取り扱い方、確率的な物事の対応について答えが見つかり、自然・社会・人文などの確率的な現象、統計データを深く吟味できるでしょう。

(学術情報センター長補佐 田学軍(情報科学部情報科学科))

 

『伊集院静の流儀』  [請求記号:910.268/I29/]

[伊集院静著] 文藝春秋 2011年

 偶然に出会った「言葉たち」にハッとしたり、救われたりすることがあります。
 最近では「神様は乗り越えられない試練を与えたりしないよ。」との友人の言葉が救いになりました。悲しみが解消された訳ではないが、どのようにその事実に立ち向かったら良いのか、気持ちの整理に向かうことができました。
 振り返るに、十数回は身の回りの人や小説、エッセイ、ドキュメンタリー番組などの中で気付かされ、その後の生き方に大きな影響を与える「言葉たち」に出会うことがありました。
 伊集院静氏は「あなたはまだ若いから、わからないだろうけど哀しみにも終わりがあるのよ」とこのエッセイ集に書いていました。これは、妻である女優、夏目雅子さんを亡くされた以降に繰り返し思い出す言葉だそうです。
 今まで近寄りもしなかったこの作家に関心を持ったのは、最近になり夏目雅子さんを語るようになったことを知ったのがきっかけでした。26年という沈黙の時間が必要だったことが「黄金色の時間」に書かれてあります。
 このエッセイ集は、「日本の流儀」「家族の流儀」「青年の流儀」「作家の流儀」などから編集されています。読み手がそれぞれ異なった状況にあっても、必ず虜にされてしまう「言葉たちに」出会ってしまうのだろうと思います。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 春日井)

 

『珍獣の医学』 [請求記号:共同図書環649.04/Ta82/]

田向健一著 扶桑社 2010年

 この本のタイトルの「珍獣」は「生息がまれで、数すくない、めずらしいけもの。」(『日本国語大辞典』)ではなく、犬猫以外のペットのことを指しています。「日本の獣医学の世界では、犬猫以外のペットは十把ひとからげに「エキゾチックペット」と呼び、押しなべて「珍獣」扱いされている」(「前がき」)そうで、これは大学の獣医学部で習うのは馬や牛などの産業動物が中心で、ペットとしては犬や猫を習うくらいだからだそうです。ペットショップでは色々な種類のペットが売られていても、それらのペットを治療してくれる動物病院の数は少ないのが日本の現状です。
 獣医師の田向さんは、どんな動物でも治してあげたいと思い、門戸を開いて治療をしています。そのため著者の動物病院には、脱水症状のタランチュラ、ノリでベタベタになったハムスター、ベランダからダイブして甲羅が割れてしまった亀、栄養失調になったスローロリス、ペットシーツを飲みこんでしまった3mの大蛇など、実に様々な動物が来ます。では、大学では教わらない動物をどうやって診断・治療するかというと、それは「「がんばる」としか言いようがない」そうです。そんな試行錯誤の日々の診療の様子や動物病院の内情が、ユーモアたっぷりの文章で書かれています。なお、可愛い動物の写真も多いのですが、手術中のカラー写真も掲載されているので、苦手な方はご注意ください。
 この本はとても面白く読めますが、ペットを飼うこと、命に飼うことについて考えさせられる本でもあります。ペットを飼っている方、これからペットを飼いたいと思っている方に、ぜひ読んで欲しい一冊です。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 磯部)

 

『江戸の判じ絵 : これを判じてごろうじろ』   [請求記号:721.8/I96/]

岩崎均史著 小学館 2004年

 みなさんは「判じ絵」というものをご存知ですか?判じ絵とは、簡単に言うと絵で出題される「目で見るなぞなぞ」のようなものです。和柄の手ぬぐいなども流行っていますので、もしかしたら「鎌・輪・ぬ(かまわぬ)」や「斧・琴・菊(よきこときく)」といった判じ絵を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
 さて、この本はその「判じ絵」を紹介した本です。まずは判じ絵の見方の基本をわかりやすく解説し、簡単な問題を例に挙げながらウォーミングアップのコーナーを設けています。そのあと、地名・人名・江戸の庶民の暮らしなどのジャンル分けてさまざまな判じ絵を紹介し、最後には長文読解に挑戦する、という構成になっています。
 一見、絵ばかりの本ですが、きちんと解読しようと思うとなかなか頭を使う本です。けれど、江戸の庶民の暮らしやくずし字にも触れることができるので、パラパラめくってみるだけでもおすすめです。勉強の合間の息抜きに、手に取ってみてください。

(学術情報センター長久手キャンパス図書館 井戸)