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2013年4月の5冊


 

 

『アメリカ黒人の歴史』  [請求記号:080/165/19B6]

本田創造著 岩波書店(岩波新書) 1991年

 『アメリカ黒人の歴史』は、アフリカ系アメリカ人の歴史をコンパクトにわかり易くまとめた、定評のある本です。日本語で書かれた入門書としてこれ以上の本はないと私は思っています。オバマ大統領が「黒人」なのかどうかという議論が、四年ほど前日本の新聞などでありましたね。合衆国における人種のありようはちょっとやそっとでは理解することができないほど複雑です。人種の問題に関心のある方はぜひ本書を読んでみてください。
 今春久しぶりにニューヨークに行きましたが、七番街にはアフリカ系アメリカ人が溢れています。メイシーズ百貨店の高級品コーナーにも。広く全体を見たわけではありませんが、ニューヨークは彼らの街になりつつあると感じました。しかし、同時に、いかにも貧しそうな身なりのアフリカ系の人を見かけるのは以前と変わりません。奴隷制時代に同じ辛酸をなめた人々も今日では貧富によって分断されている状況がわかります。アジア系、ヒスパニック系、アラブ系と次々にアメリカに新しい人々が入ってきても、依然としてアフリカ系アメリカ人が最下層に追いやられてきたことから、アメリカ史のもっとも深い闇である奴隷制の根深い影響力が痛感されます。奴隷制や人種差別は、アメリカ人だけでなく、私たちにとっても追究してゆくべき課題なのだと思います。
 本書は、植民地時代の初期奴隷制から、南部綿花王国成立とともに黒人奴隷制が定着してゆく過程をたどり、奴隷制廃止運動、南北戦争、バック・ラッシュとジム・クロウ法時代、公民権闘争から今日へと、わかり易く歴史をたどってくれます。よくある体裁ではありますが、的確な語り口、確かな情報、問題への踏み込みの深さが本書の特徴です。冒頭の、「アメリカ黒人という概念が純粋に科学的な範疇ではなく、人種・血統を基礎にしながらも、この国の歴史そのものの発展過程で形成されてきた社会的、政治的範疇だということを強調」したかったという筆者の言葉に、本書の観点が集約されています。

(学術研究情報センター長 鵜殿悦子(外国語学部国際関係学科))

 

『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』    [請求記号:共同図書環159/O38/]

岡田斗司夫著 FREEex著 幻冬舎(幻冬舎新書) 2012年

 本書は、朝日新聞の悩み事相談コーナー「悩みのるつぼ」において岡田斗司夫氏が行った回答を抜粋し、一冊にまとめたものです。寄せられた悩み事は、「難病で精神を病んだ友人を見捨てるべきか」といった深刻なものから、「有名女優と結婚する方法を教えてほしい」といった思わず脱力してしまいそうなもの、また表題にもなっている「成人した息子のオタク趣味をなんとかしたい」という、何やら他人事とは思えないようなものまで、実にバリエーション豊かです。もし皆さんが回答者だったら、これらの相談に対し、どう対応するでしょうか?同情する?ひたすら実用的なアドバイスに徹する?それとも厳しく叱咤してみますか?本書の著者である岡田氏は、綺麗ごとでごまかしたり、軽くあしらったりすることなく真正面から相談者の悩み事に向かい合い、真摯に回答を紡いでいきます。
 もちろん新聞の悩み事相談コーナーは、臨床心理士による面接などとは全く異なります。与えられた情報は一通の手紙のみであり、そこから事情を類推して回答する以上、どうしても回答者の思想・パーソナリティが色濃く反映されてしまいます。新聞の読み物としてはそれでよいのでしょうが、個々の回答内容についてはあくまで一つの意見としてほどほどに聞き流すのがよいのかもしれません。
 しかし本書の真髄は、著者自身が明言しているように、相談に対する回答そのものよりも、その回答に至るまでの思考経路を克明に記している点にこそあるといえるでしょう。そこでは、複雑に絡み合った悩みを整理し、本当の問題がどこに存在するのかを見極める分析手法や、相談者にとって最も有益と思われる回答を導き出す思考ツール、実際に回答文を構築するレトリックなどが、つぎつぎと明らかにされていきます。一言で核心をつくかのような鋭い回答も、著者が知的格闘技と呼ぶ、これらの複雑な思考過程の末に生み出されたものであると気づかされます。個々の相談内容や回答そのものは微視的な問題ですが、このような分析・思考方法については、文章作成やディベートなど、より広範な分野に応用できるのではないでしょうか。分析的なものの見方や、問題解決のための思考力を養うという点において、とくに新入生の皆さんに読んでもらいたい本です。

  (長久手キャンパス図書館 星野)

 

『文系?理系? : 人生を豊かにするヒント』  [請求記号:080/C44/120]

志村史夫著 筑摩書房(ちくまプリマー新書) 2009年

 みなさんも大学受験のときには、「文系コース」と「理系コース」のどちらかを選択したかと思います。この本は、そんな「文系」「理系」といった世間で一般的に使われている分け方について、そもそもそれはいったい何なのか、そういう分類がされるとどういったことが起こるのか、といったことについて書かれた本です。
 筆者は、「世の中の人は一般に「文科系の人」と「理科系の人」に分類されるよう」だけれど、それは「多くの場合、学校でそのように思わされた結果の「自認」なのではないかと思う」といっています。つまり、その人自身が「文科系」「理科系」に属するというよりは、どの人にも「文系」の部分、「理系」の部分また「芸術系」の部分が混在している、というのです。
 筆者は、「「学校の試験の結果」や「学校の勉強の面白くなさ」などの消極的な理由で単純、安易に自分のことを「文科系」「理科系」に決めてしまったらもったいない」といっています。そして、「文系」「理系」といった枠にとらわれず、さまざまなことに幅広く興味を持つこと、「文理芸融合」型人間の重要性を強調しています。
 さらに後半では、理系科目が苦手で文系に進んだ人、文系科目が苦手で理系になった人に対して、数学や歴史などの学問について、読者が「おもしろいな」と思えるようなエピソードを紹介しています。私も学生のときには「文系コース」を選択し、単純に「食わず嫌い」で物理を履修しませんでしたが、夕焼けの色が赤色であることと、交通信号の“赤”が「止まれ」なのには、共通の物理的な理由がある、というところを読んで、「物理は難しい」という偏見にとらわれず、もっとちゃんと勉強しておけばよかったな、と思いました。
 この本を読んで、「苦手」だと思っていた「学問」が少しでも興味のもてるものになったら、のびのび勉強できる「大学」という環境を生かして、ぜひ本当に楽しい勉強を“楽しんで”ください。

(長久手キャンパス図書館 井戸)

 

『新・大学生と図書館』  [請求記号:017/344]

日本図書館協会編 日本図書館研究会 2005年

 新しい年度がスタートしましたね。周りの環境がかわり、期待や不安を抱きながら過ごしている人もいることでしょう。
 大学生のみなさんは高校生のときまでの勉強法とは少し違い、自ら考え興味のあることを探究し、課題を見つけながら研究していることと思います。この本には、みなさんの学びを充実したものにするための、図書館の基礎的な活用法が書かれています。そして図書館を利用することにより、資料と「出会い」、自分で「確かめ」、関心を「広げ」、考えを「深め」、研究結果を「創る」という大学生の学びに必要な過程を経ることができると述べられています。
 長久手キャンパス図書館でも、新入生向けのオリエンテーションや、上級者向けのデータベース講習会などを随時開催しています。みなさんが図書館をより効果的に利用し、有意義に大学生活を送れるように、わたしたち図書館スタッフもサポートしていきたいと考えていますので、気軽に声をかけてください。

(長久手キャンパス図書館 加藤)

 

『歴史の愉しみ方 : 忍者・合戦・幕末史に学ぶ』  [請求記号:080/C64/2189]

磯田道史著 中央公論新社(中公新書) 2012年

 東日本大震災から2年が経ちました。復興はまだまだ遅れている地域もあるようです。 日本の歴史の中で大きな震災が起きたことは何度もありますが、現在までに被害に遭わずに残っている古文書が数多くあります。しかし未解読のものもあるため、今後解読されれば、新たな歴史を知ることにつながるかもしれません。
 今回は、古文書を解読しながら全国を訪ね歩き、「歴史の魅力」を新聞に連載したものをまとめた本を紹介します。忍びや武士の実態など、戦国時代から江戸期を中心に幅広く歴史にまつわる話が語られています。
 特にお勧めしたい個所は、第4章の震災のエピソードです。その中の一つで、火事によって自宅の蔵書が全て燃え、命も奪うことになった話があります。「学者が蔵書を持つことも、命がけだ」という心掛けに驚愕しました。
 最後のエピソードでは、東海道新幹線の車窓から関ヶ原の合戦を追体験する、「関ヶ原見物作法」が書かれています。ここを読むと、実際に新幹線に乗った時に追体験をしてしまいそうで、愉しくなりました。この本を読むことで、皆さんも「歴史を愉しむ」ヒントを見つけてはいかがでしょうか。

(長久手キャンパス図書館 古屋)