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2014年6月の5冊


 

 

『アメリカ文学入門』 [請求記号:930.29/Su87]

諏訪部浩一責任編集 三修社 2013年

 一昔前の英米文学研究を志す学生の必読書は斎藤勇著『イギリス文学史』(研究社)で、注を含めると千ページ近くあるこの本を手に持っているだけで勉強している気になったものです。この本と、大橋健三郎・斎藤光著『アメリカ文学史』(明治書院)をいっしょに読むのが定番でした。その後出版された、大橋・斎藤・大橋吉之輔著『総説アメリカ文学史』(研究社)も定番の書となりました。しかし、数多い文学史本の中で、怠け者大学生の私にもっとも役立ったのは、野町二他著『立体イギリス文学』・田島俊雄他著『立体アメリカ文学』(朝日出版社)です。作家の写真と経歴、代表作品とその概要がコンパクトにまとめられていて、とても使い易い本です。この本を頼りに片っ端から作品を読んでいったので、英語が読めるようになり、文学史が少しわかるようになった気がしたのを憶えています。
 今回紹介する『アメリカ文学入門』はアメリカ文学史の教科書として作られたのかもしれませんが、当時の私のような、アメリカ文学ってどんなものなのか知りたいという学生にとって役立つ本だと思います。第一部「アメリカ文学の歴史」は、作家単位の説明が年代順に並べられているおなじみの構成ですが、第二部「アメリカ文学の重要テーマ」に本書の特徴はあります。若者の文学離れが進む昨今、何を手がかりに文学作品を読んだらいいのかわからない、という人が増えています。本書はアメリカ文学が提示するテーマを、人種、階級、ジェンダー、戦争、宗教といった社会的な問題から、心理学的・哲学的主題、そして、視点、語り手、文体/詩形といった文学フォルム上の問題まで網羅し、多くのヒントを与えてくれています。
 最後の「巻末資料」には、「盗用(plagiarism)を避ける」というページがあり、多くの論文がインターネット上に公開されているが「安易にコピー・アンド・ペーストしてはいけない」、「研究とは他人による過去の業績の積み重ねに支えられて新たな知見を発表するものであるから」、出典の明示は他人の業績への敬意として不可欠である等、タイムリーな助言をしています。本書は研究を始めようとする人が読むのに適切な内容となっています。

(学術研究情報センター長 鵜殿悦子(外国語学部国際関係学科))

 

『努力する人間になってはいけない : 学校と仕事と社会の新人論』 [請求記号:371.1/A92]

芦田宏直著 ロゼッタストーン 2013年

 今年度のACジャパンの全国キャンペーンは 「となりの先生」です(イメージビデオはhttp://www.ad-c.or.jp/campaign/self_all/01/("全国キャンペーン となりの先生." AC JAPAN. で視聴可能).このキャンペーンは,あらためて身の廻りに存在することや起こること全てのことから学び続けるという姿勢の大切さを再認識させてくれました.フランスの詩人ルイ・アラゴンの詩句「教えるとは希望を語ること 学ぶとは誠実を胸に刻むこと」を今風の映像として表現するとこんな感じなのかもしれません.愛県大の学生さんには,学生時代には本や人,異文化,知に出あう(会う,合う,逢う)機会を増やし,学ぶ楽しさに気がついてください.なお,知識を増やすこと,技術やスキルを身につけることは重要なことですが,増やしたり身につけたりするプロセスから学ぶこともたくさんあります.是非,図書館を利用しましょう!
 ところで世の流れなのでしょうか.長久手キャンパスでも学生さんから"お疲れ様です"と声をかけられることがあります.昔は"こんにちは"だったのが,深夜や週末でもないのに"お疲れ様です"に変わってきているような気がします.昭和37年生まれの少し古い人間としては違和感を感じていましたが,員数主義[1]や"頑張るのではなく我を張る"[2]の論説を読んだ後は,"仕事・勉強=苦労して頑張らなくてはいけないこと"と潜在的に考えている人の数が増えているのだと納得するようにしています.注意していないと,私たちはグローバリゼーションに対応するために頑張ったあげく,私の人生はクローバッカリ(苦労ばっかり)だったなーと振り返るのも悲しい感じがします.クローバッカリゼーションとなってしまいます.同じ時間を使うのであれば,楽しんで取り組める時間帯をできるだけ多くしたいものです.どうすればこの時間帯を多くできるでしょうか?
 今回紹介する本はそのヒントを与えてくると思います.努力に関して,卒業式や入学式での学生向け挨拶を交えながら論じている本です.タイトルだけで「そうか,努力する必要ないのか!」と判断してしまうと危険です.分厚い本ですが,是非,読んでください.
 この本で著者は,問題解決のために時間(単純な努力)だけを費やして対応し疲弊するのではなく,やり方を考えてはどうかと提案しています.全くの同感です.決まっていることやルーチンワークは,従来型の時間をかけるという努力でカバーできるかもしれません(この種のことは機械やコンピュータに任すことが増えてきており,人が時間をかけてまで対応することは減ってきています).一方で,新しい案件やルーチンワークでもそのまますると時間が大幅にかかりそうなことについては,取り組む前にやり方を考えることに時間をかけようと提案しています.人に頼むにしても,機械やコンピュータに任せるにしても,どのように進めるのが全体としてロスがなくて済むのかを考えた方が良いはずです.仕事のやり方を考えないと,本来は楽しい仕事や学修がクローバッカリになってしまいます.結果的に,キャンパスにはますます"お疲れ様"が溢れかえります.そんな状況から抜け出るため,長時間努力だけで解決しようとしないためにも,OR(オペレーションズ・リサーチ)やサービス・サイエンスは重要です.もしも長時間労働・勉強になりがちで困っているようなら奥田研究室に相談して下さい.
 最後にこんなエピソードを紹介しましょう.MLBのダルビッシュ有選手の2012年の呟きです:"体が違うのではない.こっちはそもそも(日本とは)トレーニングの内容が違うから,(選手の体は)でかい.".日本選手は十分にトレーニングをしています.だけど,そのやり方にまだまだ意識改革の必要があるということを呟いています.
 [1] 山本七平,『日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条』,角川書店,2012.[請求記号:391.207/Y31]
 [2] 多田道太郎,『しぐさの日本文化』,講談社,2014. [請求記号:361.42/Ta16]

      (学術研究情報センター長補佐 奥田隆史(情報科学部情報科学科))

 

『再審と科学鑑定: 鑑定で「不可知論」は克服できる』 [請求記号:327.65/Y67]

矢澤f治編 日本評論社 2014年

 先ごろ袴田事件の再審開始が決定しました。冤罪が疑われる事件として有名ですので、事件名くらいはご存じの方も多いと思います。
 この本は、専修大学で行われた同タイトルのシンポジウムの記録です。袴田事件以外にも東電OL殺人事件や名張毒ブドウ酒事件などの担当弁護士が、証拠の鑑定についてを中心に事件・裁判の概況を説明し、検察側の証拠のねつ造や隠蔽、裁判官による事実の捻じ曲げなどを指摘します。発言をそのまま文章にしている形式ですので、より生々しく感じられます。
 DNA鑑定などの科学鑑定の技術が進歩し、鑑定結果について「完全に疑いの余地なく証明されたというわけではない」「条件次第では全くあり得ないとは断定出来ない」といったいわゆる"不可知論"で煙に巻くことが出来る場面は少なくなったとも思われますが、依然としてそれを扱う人間の裁量により、いかようにもなるという危険があると感じさせられる内容です。
 新聞やマスコミの報道に誘導され、「ゼッタイやってる顔だよね!」なんて無責任な事を言っているうちはいいのですが、もしみなさんが裁判員に選ばれた時、この本のように検察側により証拠が隠滅・改ざんされていたとしたら、その証拠で判断を下せますか?あるいは平気な顔でウソをつく被告人に、弁護側が騙されている場合もあるかもしれません。それでも裁判員は、法廷に出された証拠のみで判断をしなければいけないのです。そんなことを考えながら読んでみてください。
 冤罪について興味を持った方は、映画『それでもボクはやってない』(周防正行監督 [請求記号:DVD//356])もご覧ください。冤罪を訴える人たちはなぜウソの自白をしてしまったのか、「やってない」ことを「やってない」と言うことがいかに難しいか。それでも本当にやっていないなら「やってない」と言いたいと私は思います。

(長久手キャンパス図書館 大石)

 

『スズメ : つかず・はなれず・二千年』  [請求記号:488.99/Mi21]

三上修著 岩波書店 2013年

 家の周り、学校の校庭、街路樹の傍など、どこでも見かける「ザ・普通の鳥」スズメ。
 誰でも知っていて、近しい存在のイメージですが、意外に謎が多い生態です。
 学名は、「Passer montanus」、英名は「Eurasian Tree Sparrow」といい、鳥類なので、祖先は恐竜の仲間かもしれません。日本文化との関わりが多く、俳句・民話・童謡・家紋・美術などに取り上げられており、思い浮かぶものもあるでしょう。
 この本では、豊富な写真や図版を交えて、スズメの生態を易しく解説。身近すぎて知らなかったことを再確認できます。可愛いイラストと共に、小さき隣人を愛でてみませんか?

(長久手キャンパス図書館 古屋)


 

『太陽の塔』 [請求記号:913.6/Mo54]

森見登美彦著 新潮社 2003年

 皆さん、華のある楽しい学生生活、送っていますか?
 楽しい人、まあまあの人、そうでない人、色々かと思います。もし、悶々鬱々とした生活を送っている方がいれば、読んでいただきたいのがこの作品です。(逆に、楽しい方は読まない方がいいかもしれません。)
 主人公は「私の大学生活には華がない。」と言っている冴えない男子学生です。一時、彼は恋人ができ華のある日々をおくりますが、突然、一方的に振られ絶望的な状況に陥ります。物語では京都の町を舞台に、主人公の妄想をまじえた元彼女への未練たっぷりの行動がつづられます。こう書くとストーカー日記のようですが、主人公の妄想ぶりと、自己評価の異常な高さが笑いを誘います。しかし、最終的には失恋の悲しさが切々と伝わってくる、おかしさと切なさのギャップが魅力的な不思議な作品です。
 この作品は日本ファンタジーノベル大賞を受賞しています。この妄想力、ある意味ファンタジーと言えると思います。皆さんにはできればこの主人公の様にはなってほしくはないのですが、同じ状況にある人なら、ほのかに共感してしまうのかもしれません。

(長久手キャンパス図書館 渡邉)