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2015年7月の5冊


 

 

『犬のココロをよむ : 伴侶動物学からわかること』 [請求記号:645.6/Ki29]

 菊水健史・永澤美保著 岩波書店(岩波科学ライブラリー) 2012年

 私は犬好き人間で(猫も嫌いではありません)、我が家にも愛犬がいます。そのため、犬をテーマにした本を読むことがよくあり、ここではそうした中の手頃な1冊を紹介します。私が子供の頃には、日本では犬は番犬として家の外で飼われ、えさも前日の残飯などを与えるような飼い方が一般的でした。しかし、アメリカのテレビドラマなどを見ていると、飼い犬が家の中で家族と一緒に当たり前のように暮らしているシーンが出てきて、我彼の違いに驚いたものでした。いまでは日本でも「番犬」ではなく「ペット」として、家族の一員のように暮らしている犬がずいぶん増えたと思います。斯く言う我が家でも大型犬種のコリー(名犬ラッシーの)が2頭、堂々と家の中で寝転がっています。もちろん大きな犬が家の中にいれば、「番犬」になってはいるでしょうが、むしろ家族の一員として一緒に暮らしているという風情です。私は週末しか帰れませんから、帰宅の際に彼女らが嬉しそうに駆け寄ってきたり、じゃれついたりすると、もうすっかりめろめろになってしまいます。そうした犬の行動や心理、性格を、様々な実験結果を紹介するなど、できるだけ客観的、科学的に取り上げ、説明しているのがこの本です。なるほどと得心したり、当然のことだろうと思ったり、そうだったのかと感心したりと、犬のココロを読むだけでなく、犬好きのココロをくすぐってくれる1冊でもあります。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『「大切なもの」を失ったあなたに : 喪失をのりこえるガイド』 [請求記号:141.6/ N62]

 ロバート・A・ニーメヤー著 鈴木剛子訳 春秋社 2006年

 みなさんにとって<大切なもの>とは何でしょうか。それは、家族や友人など大切な「人」かもしれませんね。また大切な思い出が詰まったアルバムなどの「物」かもしれませんし、毎日を過ごせるといった当たり前のような「日常」かもしれません。もしかしたら、信念や自尊心、思いやりなど、あなた自身の「価値観」を支えているものかもしれません。
 そんなあなたにとって<大切なもの>が、もしなくなったら、あなたはどうするでしょうか。<大切なもの>を失ったとき、一体どうすればいいのか…。この本はヒントを示してくれています。
 みなさんがこれから生きていく中では、<大切なもの>を失い、怒ったり苦しんだり悲しんだり…、途方に暮れたりすることもあるでしょう。出口のない真っ暗なトンネルに入ってしまったかのような絶望的な感覚に陥ることもあるかもしれません。でも人は悲しむ過程を経て人生をより豊かにすることができる、そのことをこの本は学術的にも臨床的にも教えてくれています。
 これからの人生を歩んでいくみなさんへ。ぜひ読んでいただきたい本です。

(教育福祉学部社会福祉学科 大賀有記)

 

『世界の奇妙な博物館』 [請求記号:069.8/L94]

 ミッシェル・ロヴリック著 安原和見訳 筑摩書房(ちくま学芸文庫) 2009年

 "焦げた料理""全米嘘つきの殿堂""ジュラ紀のテクノロジー"。これらの言葉を聞いて、皆さんは何を連想しますか。新しい魔法使いの物語?それとも絵本のタイトル?そんな楽しくてワクワクするものをイメージした方が多いことと思います。ですがこれらは全て、本書で紹介されている「博物館」の名称です。
 本書は重厚で大規模な誰もが知っている博物館ではなく、種々さまざまなものを収集・公開している「博物館」を紹介しています。中には、個人の蒐集家が趣味の延長で公開しているところや、宿泊可能なところ、Web上のみで公開しているところもあります。
 目次を眺めているだけでも、世界にはこんなにたくさん"奇妙な博物館"があるのか、と感心させられます。紹介されているのはほとんどが海外の博物館なので、実際に行くことはなかなか難しいと思いますが、Web上で公開しているところなら、見たいときにすぐ見にいくことができ、しばし奇妙な世界をさまようことも出来ます。そして、蒐集が好きな方なら誰でも博物館長になってしまおうかしら、と思わせるような公開の楽しさも教えてくれます。

 そんな小規模な博物館を本書に真似て一つ紹介したいと思います。
 長野県下伊那郡にある「大鹿村中央構造線博物館」です。展示物は主に岩石標本ですが、博物館の正面に位置する山の頂に中央構造線が露出しており、そのまま敷地内を貫いています。山そのものを展示物に含んでいるともいえる壮大な博物館です。興味のある方はぜひホームページもご覧ください。

(長久手キャンパス図書館 須原)

 

『時間の図鑑』 [請求記号:421.2/H33]

 アダム・ハート=デイヴィス著 悠書館 2012年

 時間はかたちもなく音もしない、においもないものです。ですが、時計が時間を視覚化してくれ、わたしたちに時間を知らせてくれます。そして、時間のとらえ方は時代や国、人によって異なります。今回お薦めするのは、「時間の図鑑」です。
 「時間の図鑑」では、時間とはなにか、から時間について様々な分野・観点から紹介されています。"時間のストレス"やさまざまな時計の話、時間と科学の話など、はじめから最後まで通読しなくてもよい図鑑は、開いたページで意外な発見があるかもしれません。いかにして時間が生みだされたのか、なぜ幼少期の頃と今と一日の長さが違うように感じるのか、図鑑を開いてみるのはいかがでしょうか。

(長久手キャンパス図書館 近藤)


 

『新編 子どもの図書館』 [請求記号:016.28/I75]

 石井桃子著 岩波書店(岩波現代文庫) 2015年

 児童文学作家である石井桃子は、「クマのプーさん」や「ピーターラビット」シリーズを翻訳したことで知られていますが、一方で日本の児童文学の発展のために、様々な形で尽力してきました。
 本書はその石井桃子が1965年に開いた、子どものための小さな図書館、「かつら文庫」の7年間の記録と、著者の児童文学への想いを中心にして綴られています。
 本書で最も興味深い記述は、2章の「子どもたちの記録」ではないでしょうか。この章では、「かつら文庫」に通う子どもたちの軌跡が、具体的な本の名前を挙げつつ、たどられていきます。この記録は約50年前のものですが、「シナの五にんきょうだい」や「エルマーとりゅう」など、今日でも子どもたちに人気のある本が、多く含まれていることに驚かされます。
 本書では、文庫ができて約40年後(1998年)の様子も語られますが、著者は昔に比べ、小学校高学年の来館者が減ったことを憂い、勉強やテレビゲームなどの「さまざまな理由から、のんびり本をたのしんでいられないほど、忙しくなってしまった」ということではないか、と述べています。このように危惧されている子どもを取り巻く状況は、2015年の今なお解消されてはいないでしょう。
 児童文学に関心のある方はもちろんのこと、何らかの形で子どもと関わっている全ての方にお奨めしたい一冊です。

(長久手キャンパス図書館 山田)