今月の5冊へ先月までの5冊へタイトルリストへ

書名のリンクは図書館所蔵です。別ウィンドウが開きます。

2015年11月の5冊


 

 

『チャイコフスキー (作曲家・人と作品シリーズ)』 [請求記号:762/10/691]

 伊藤恵子著 音楽之友社 2005年

 芸術の秋、秋の夜長をゆったりとしたクラシック音楽で過ごすのもよいですね。私はクラシック音楽が好きでよく聴きますが、なかでも、19世紀ロシアの作曲家チャイコフスキーの作品が気に入っています。ベートーヴェンからブルックナーへと連なるドイツ音楽の構築感をもった交響楽作品に比べて、甘美な旋律に流れるロシアの作品なんかつまらないという人もいるようですが、もともと教会音楽でオルガンの重厚な響きを伴っていた西欧世界と、教会での楽器伴奏を認めず、無伴奏合唱のみで展開してきたロシア正教会の世界との「発生学的な」違いが基礎にあります。それにしても、彼のオーケストレーションの巧みさ、美しさには本当に心打たれますが、単に感性の趣くままに書いたのではない曲作りには、実はドイツ流とは異なるしっかりとした設計感があります。そのチャイコフスキーの人物や作品については、これまでも多くの著作がありますが、本書では不可解とされる彼の死をめぐっても、膨大な書簡類などの分析による最新の研究成果をもとに、謎めいた自殺説を否定してコレラによる病死説を支持しています。彼はたいへん筆まめな人で、たくさんの手紙を書き、その書簡類の多くがモスクワ近郊のクリンにある彼の旧宅(現チャイコフスキー博物館)に保存されています。ロシアへ行ったら是非立ち寄りたい場所の一つです。芸術の秋、芸術家の人生ドラマにも目を向けてはいかがでしょうか。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『あたしとあなた』 [請求記号:911.56/Ta88]

 谷川俊太郎著 ナナロク社 2015年

木洩れ陽の下に/いたかった/ずっと//お婆さんになったねと/柔らかい声で/未来のあなたが/あたしに言う//置いてけぼりに/して下さいと/歴史に向かって/あたしは言う//戦場の/ぬかるみに/座りこんで/仔犬を/抱きしめている/そんな/過去完了の/あなた/風に砕かれて/光が/踊っていた/記憶

(「木洩れ陽」)

 〈あたしの/あ/から/あなた/の/あ/へ〉(「あたしとあなた」)という響き合いから、この詩集の世界ははじまります。〈あたし〉から〈あなた〉への語りかけでつらぬかれた世界は、〈あなたと/あたし/そこら中に/いるわ〉(「カフェ」)とされたり、〈世界中の/無数の/あたしと/世界中の/無数の/あなたは/どこにも/いない〉、〈今/一人の/あたしは/ひとりで/一人の/あなたを/待っている〉(「特製しおり」中の無題詩)とされたりもします。
 変幻自在の〈あなた〉と〈あたし〉。それが、私たちの世界のありようなのかも知れません。そして、そこには〈いる〉ことと〈いない〉ことの狭間が見え、死の影も揺曳します。
 〈お婆さんになったねと/柔らかい声で〉〈あたし〉に語りかける〈未来のあなた〉と〈過去完了の/あなた〉は、時の狭間をかいま見せ、私たちの存在が、それら淋しみのたゆたいに浮かべられていることを気づかせます。だから、〈置いてけぼりに/して下さいと/歴史に向かって/あたしは言う〉のでしょうか。

 イギリスの詩人T・S・エリオットも同じことを感受していたひとりです。

現在の時も、過去の時も/未来には一つの時になるだらう/そして、未来は過去の中に含まれる/もしすべての時が現在であるなら/すべての時は贖ふことが出来ない

(「バーント・ノートン」鮎川信夫訳)

 晩秋の一日、あなたの〈あなた〉に語りかけてみてはいかがでしょう。

(日本文化学部国語国文学科 宮崎真素美)

 

『老化はなぜ進むのか : 遺伝子レベルで解明された巧妙なメカニズム』 [請求記号:491.358/Ko73]

 近藤祥司著 講談社(ブルーバックス) 2009年

 最近、アンチエイジングという言葉をよく耳にします。加齢や老化に抗い、身体機能や外見を若々しく保つように様々な提案がされています。特に美容面においては、ヒアルロン酸注射やサプリメントの服用、レーザー照射など膨大な量の情報がメディアで紹介されています。
 また昔から、不老不死を願い、何とか手に入れようと奔走する権力者が描かれたり、孝行の徳として若返りを手に入れる、という話はたくさんあります。若さを保ちたいという願望は今も昔も変わらないようです。では、若さを保ち老化を遅らせることは可能なのでしょうか。
 本書によると「老化には大きく分けて2つあると考えられます。ひとつは「個体老化」、もうひとつは「細胞老化」と呼ばれるものです。そして、「細胞老化とは、われわれの体を構成する体細胞には分裂回数に限界があり、寿命があるという現象のことです。」とあります。
 私たちが普段、意識しているのは個体老化で、しみ、しわ、白髪などの見た目の変化や物が見えにくくなった、動作が遅くなったなどの身体機能の変化です。ですが、個体老化を遅らせようと努力を重ねても、それを遅らせることは難しいようです。老化には「細胞老化」という「遺伝子レベル」の「巧妙なメカニズム」が関係するからです。"遺伝子"と聞くと専門的な難しい内容ではないかと気後れしますが、本書は科学入門書として、わかりやすく丁寧な説明がされています。
 老化に抗うことは難しいと頭では理解しつつ、いつか叶うかもしれない若いままの自分を秋の夜長に夢想してみるのはいかがでしょうか。

(長久手キャンパス図書館 須原)

 

『ビブリオバトル : 本を知り人を知る書評ゲーム』 [請求記号:019.9/Ta87]

 谷口忠大著 文藝春秋(文春新書) 2013年

 ビブリオバトル という言葉に、思わず本を手にとりました。
 ビブリオバトルは、著者が大学の研究室に在籍していたときにつくったバトルです。本を紹介し、参加者全員が投票をして『チャンプ本』を決めるゲームですが、バトルができるまでの経緯やルールも面白いです。
 このバトルは、これから役立つ、いろいろな効果があります。その一つに「プレゼン力があがる」ことです。原稿を用意して読むだけでは、チャンプ本に選ばれません。参加している人、その場の雰囲気に合わせて本を紹介していくと、聞いている人はその本に興味をもちはじめます。すると、『チャンプ本』に近づきます。また、はじめの一言や本を出すタイミング、余った時間をどうするかなど、プレゼンする上で大事なことをバトルという場で経験を積むことができます。
 そして、何より「意外な,いい本」に出会え、「本を知り人を知る」ところが、このバトルの醍醐味のひとつだと思います。
 本書によると、1時間に1冊読む速読術を学んだ人が、1日8冊読むとすると、80年間で読める冊数は約23万3千冊です。これは、現在の新刊発行点数の約3年分にしかなりません。時間には限りがあります。大量の本の中から、面白いと思える本に出会える機会が増えれば、書店や図書館など本を選ぶとき、棚をみる目も変わると思います。
 まずは、身近な人や友達、研究室でバトルしてみてはいかがでしょうか。読書とバトルを一気に味わえる、戦えば戦うほど面白いゲームです。
 そして、バトルの参考にこの本を読むと、さらに面白さが増すと思います。 

(長久手キャンパス図書館 近藤)


 

『図説よりすぐり国立国会図書館 : 竹取物語から坂本龍馬直筆まで』 [請求記号:026/Z8]

 国立国会図書館編 勉誠出版 2014年

 国立国会図書館は、国内のほぼ全ての出版物を収集する、日本で唯一の納本図書館です。皆さんの中には、規模が大きすぎて、どういった場所なのかイメージしづらい方もいらっしゃるかもしれません。
 今回紹介する本は、その国立国会図書館にある数々のコレクションの一端を紹介したものです。「源氏物語」や「伊勢物語」といった古典の定番のものや、芥川龍之介の自筆原稿、明治期の政治家の書簡、変わったところでは「国会議員双六」といったものまでが掲載されています。この図書館はまさに、日本の出版や書物の歴史が凝縮された場所、といっても過言ではないのではないでしょうか。
 実はこの本で紹介されている資料のほぼ全てが、「国立国会図書館デジタルコレクション」等でインターネット公開されているとのことです。本の中では一部しか紹介されていませんが、インターネットでは全てを閲覧することができます。
 本学図書館でも、国会図書館でデジタル化され、インターネット公開されていない資料の一部を閲覧・複写することができる、「国立国会図書館デジタル化資料送信サービス」が去年から開始されました。古典籍や貴重書だけでなく、戦後の雑誌や図書など、世の中で流通したありとあらゆる資料、約137万点が対象となっています。是非ご予約の上、利用してみて下さい。

(長久手キャンパス図書館 山田)