今月の5冊へ先月までの5冊へタイトルリストへ

書名のリンクは図書館所蔵です。別ウィンドウが開きます。

2015年12月の5冊


 

 

『トルコ (暮らしがわかるアジア読本)』 [請求記号:302.274/Su96]

 鈴木董編 河出書房新社 2000年

 1980年代から90年代にかけて、何度か海外調査に出たことがあります。そのなかで最もよく行った国がトルコでした。1983年、88年、91年と3度にわたり、延べにして4〜5ヶ月間、トルコ国内を西から東、北から南へと訪ね回りました。当時はまだトルコに関する本も今よりずっと少なく、専門的な歴史書か、旅行ガイドブックなどはありましたが、現代トルコの全体像を概観したものはあまりありませんでした。近年はトルコへの関心もかなり高くなってきましたし、研究者の層も厚くなってきましたから、今回紹介するような専門の研究者が書く普及書や入門書も増え、トルコの社会文化、政治経済、略史、日土(漢字表記では土耳古(トルコ)です)関係などを簡単に学べるようになりました。著者は東大でオスマン帝国史を専門に研究していましたが、新書版などの普及書も手がけておられます。アジアとヨーロッパにまたがるトルコは、歴史的にも地理的にもたいへん興味深い国です。小アジアの歴史は古代ギリシャどころか、人類の農耕文化や都市文化の発祥地の一つに数えられ、鉄器文明で栄えたヒッタイト帝国の故地でもあります。現代もヨーロッパ、ロシア、アフリカ、アジアの結節点に位置し、中東や中央アジアなど国際関係上も重要な位置にあります。また、トルコ料理は世界の三大料理に数えられるほか、トルコ人はたいへん親日的で有名ですが、そうした経緯や背景もこの本から学んでみて下さい。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『アミ 小さな宇宙人』 [請求記号:963/B24]

 エンリケ・バリオス著 石原彰二訳 さくらももこ絵 徳間書店 2000年

 皆さんは宇宙人、というとどんな風貌のどんな人格を思い浮かべますか。本書に出てくるアミは男の子の姿の宇宙人です。9歳の少年ペドロの問いかけにアミが答える、そのやりとりが本書の全てです。
 アミは宇宙人なので高度に発達した文明からやってきました。それでも彼の回答はとてもシンプルで、子供でも理解できるほどに明快です。わたしたち大人はこの世界や人生を複雑に難しく考えようとします。数ある問題をどう解決したらよいのか、単純な回答を疑ってかかり、そんなに簡単なら苦労はしないと行動もせずに頭で勝手に決めつけて諦めてしまいます。真理というものは実は大人も子供も関係なく、理解できるやさしさと正しさと奥深さを持っているものだと本書を読むとわかります。
 アミはペドロに愛の大切さを説きます。誰もが大切だと同意はしても、それを現実の問題の解決とするのをどこかで疑っています。ペドロも何度も問いかけます。それでも結局はアミの回答以上の答えを導くことはできないと思ってしまいます。アミの見せてくれる高度な文明というのが科学技術だけではない、高度な精神性があって初めて到達できる未来であるという説明も考えさせられます。
 本書は発売されたチリでベストセラーになり、その後11カ国語に翻訳されました。それだけこの本が受け入れられたということがわかります。国を越えて地球規模で考える必要に迫られている現在こそ、読んでみてほしい一冊です。

(長久手キャンパス図書館 大島)

 

『私たちの日本語』 [請求記号:810.4/Sa13]

 定延利之編著 朝倉書店 2012年

 みなさんは街中の看板や友達とのおしゃべりの中で、あれ?と思うような違和感のある日本語の表現に出会ったことはありませんか。
 この本ではそんな日常生活で何気なく使っている日本語について、誤変換・直訳日本語・破格・キャラクタ・カタカナ表記・顔文字・挨拶・断り方などのさまざまな角度から考えて学ぶことができるようになっています。この本の目標としては「日本語を世界の諸言語の一つとして客観的に観察できるようになること、自身のコミュニケーションを多角的かつ論理的に分析できるようになること、そして「ことばについて考える」楽しさを知り、人生をより豊かなものにされること」が挙げられています。各章ごとに、ねらい・内容・まとめ、そして考えを発展させるための問題という構成になっているので読みやすく、さらに「興味を持った人の参考になりそうな文献」として詳しく学びたい人のために文献も多く紹介されています。
 この本をきっかけにして、あらためて「私たちの日本語」を見直して考えてみるのもおもしろいのではないでしょうか。ですがあまり難しく考えすぎなくても、普段使っている「ことば」は相手に伝わればそれで充分だとも思います。それは相手のことを考えていれば、自然とできることなのかもしれません。わたしもほんの少しばかり日本語に気をつけながら、大切な人たちに年賀状でも書くとしましょう。みなさんも、よい年をお迎えください。

(長久手キャンパス図書館 加藤)

 

『イン : イギリスの宿屋のはなし』 [請求記号:233.05/U95]

 臼田昭著 講談社(講談社学術文庫) 2009年

 近世のイングランドでは、人々がお金で酒食や休息を求めた場所を「イン」「タヴァン」「エールハウス」などと呼んだそうですが、本書はそれらのいわゆる「宿屋」に集まる「みだりがましい放蕩者」たちの人間模様を、当時の人々の日記や小説などから拾い集めて面白おかしく紹介してくれる本です。
 ひとくちに「イン」といっても、そもそもは巡礼者のための慈善施設を発祥とするものも多く、地域や時代によって様々に姿をかえてゆきます。都会の酒場ではシェイクスピアが友人たちと機智を戦わせる傍らで田舎者をだます詐欺が横行、決闘や逢引の場ともなりました。一方、地方では宿屋は村の中心と言ってよく、たとえ村の堅物の牧師にとってはあらゆる悪事の温床であっても、インが村の郵便局、裁判所、選挙事務所、競売所、見世物小屋…等々、村の日常生活に欠かせない役割を担っていたのは事実で、なにごとにつけ人々はインに集まったといいます。
 また、鉄道の誕生以前の駅馬車と、その中継宿としての馬車宿についての記述も興味深いものです。当時花形の職業だった馭者の魅力や馬車の等級、チップの払いどころ、宿の献立やトイレ事情、さらには法外な勘定書きに対する粋な振舞い方まで、当時の人々の人間味あふれる言葉を通してその価値観が生き生きと伝わってきます。
 どのエピソードも、小説の一場面から日記の一節、そして著者の実体験へと、著者の気の向くままに行ったり来たりしながら、ユーモアあふれる筆致でさまざまに展開していきます。さらにあとがきには、現在の(原本は1986年の刊行ではありますが)イギリスのパブを楽しむための心得として、パブの探し方や注文・支払のしかた、ビールの種類の解説などもしっかり載っており、イギリス文学と酒場に対する著者の並々ならぬ愛情がひしひしと伝わってくる一冊となっています。

(長久手キャンパス図書館 津田)


 

『虫と文明 : 螢のドレス・王様のハチミツ酒・カイガラムシのレコード』 [請求記号:486/W36]

 ギルバート・ワルドバウアー著 屋代通子訳 築地書館 2012年

 みなさん虫はお好きでしょうか。私はとても苦手です。見た目が可愛らしくなく、刺してきたり、いつの間にか部屋に入っていたり、時には病気を運んできます。どうしても不快な部分に目が向いてしまい、今まで虫に興味を持つことはありませんでした。私と同じ気持ちの人も多いのではないかと思います。そこで、私のような方が、ほんの少し虫の見方が変わるかもしれない本を紹介したいと思います。
 『虫と文明 : 螢のドレス・王様のハチミツ酒・カイガラムシのレコード』という本です。タイトルに惹かれて読んでみたところ、様々な場所での虫と人の生活が記されており、今まで知ることのなかった、虫の素晴らしい点を知ることができました。
 中でも感心したのは、ミツバチです。ミツバチはダンスをして仲間に情報を伝えるのですが、そのダンスには文法があり、正確に情報を伝えることができるそうです。例えば、言語を持たない蜂は蜜が沢山とれる場所を、ぼんやりとしたニュアンスしか伝えられないのに対して、ミツバチは、巣からの明確な距離や方角まで伝えることができるそうです。私はこのダンスに興味を惹かれ、読み進んでいくうちに、虫への見方が少し変わりました。
 他にも蚕や、カイガラムシなどの人類にはなくてはならない虫たちが登場するので、虫好きな人はもちろんですが、今まで虫に関心の無かった人に、是非読んでいただきたい本です。

(長久手キャンパス図書館 黒岩)