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2016年2月の5冊


 

 

『ニッポン景観論』 [請求記号:290.13/Ke58]

 アレックス・カー著 集英社(集英社新書ヴィジュアル版) 2014年

 この本は日本を象徴するような各地の美しい自然景観や文化景観を紹介するものでも、地理学的な景観論を展開するものでもありません。美しいはずの歴史景観や自然景観、都市景観などを無神経に台無しにしている種々の夾雑物を取り上げ、日本の風景のあり方を問う一種の文明批評の本です。著者はアメリカ出身の日本文化研究者で、京都の町屋や徳島県の祖谷渓の農家など、日本各地の古民家再生プロジェクトを手がけるコンサルタントも営んでいます。その著者の目から見た、日本の景観を台無しにしている夾雑物とは、町並みにそぐわない電柱や電線のジャングルであり、重要文化財となっている神社仏閣の前に立ち並ぶ種々の案内や注意喚起の看板であり、自然景観を配慮しない工作物であり、町の標語看板であり…、と数限りがありません。現場で撮った多数のそれら写真を掲げながら、日本人の景観認識のあり方に鋭い警句を投げかけています。当の日本人自身は、もちろんそうした景観破壊の現状に敏感に反応する人々もいますが、「日常の一コマ」として意識もせずに眺め、受け入れている人々が多いのではないでしょうか。親切でお人好しな日本人のことですから、これでもか、これでもかと「注意」し続けられ、由緒ある文化財の前で知らず知らずに「企業宣伝」に乗せられている、そういう姿を、著者は愛情を込めて批判し、「美しい景観」とは何かを、本書を通して問いかけています。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『民王(たみおう)』 [請求記号:913.6/I33]

 池井戸潤著 文藝春秋(文春文庫) 2013年

 同タイトルのドラマ、ご覧になりましたか?あの『イケイド・ジュン』ですよ。
 「少年よ、総理(オヤジ)をめざせ!」という帯を見たときは、政治家の後継者物?と思いスルーしたのですが、連続ドラマが面白かったですし、配役も好きだったので、本も読んでみました。内閣総理大臣の父親(遠藤憲一さん)と大学生のドラ息子(菅田将暉さん)の体が突然入れ替わってしまいます。何回も。いつ入れ替わるか予測できません。国会答弁中にも入れ替わっちゃいます。え〜、今ぁ?どうする翔(しょう)(息子の名前)!って感じで、一気読みしました。この手の入れ替わりものは昔からありますけど、親子、それも総理大臣と漢字も読めない大学生という設定が面白いです。
 <国会答弁で総理大臣の姿をした翔が準備された原稿を読む場面>
  翔「−経済対策をフシュウした積極的な景気刺激策を講じてまいるトコロアリです」
  父「フ、フシュウ?」(テレビで秘書と中継をみている)
  秘書「踏襲ですよ、踏襲!」
  父「ト、トコロアリってのは?」
  秘書「たぶん、所存ですね・・・」
 といった笑える場面が沢山あります。深〜い場面もあります。そして、最後は・・・。
 今までのSFっぽい入れ替わりものとは違う現代らしさを感じさせる終結です。

(学術研究情報センター副センター長 小松万喜子(看護学部看護学科))

 

『仏教と資本主義』 [請求記号:331.21/O72]

 長部日出雄著 新潮社(新潮新書) 2004年

 最近留学する学生が少なくなったと言われますが、愛知県立大学では海外に留学する学生が毎年200人以上(全学生の約5%)います。行き先も北南米、アジア・オセアニア、欧州等多岐に渡っています。さすが外国語学部を有するだけのことはありますね。
一方、外国人留学生も海外12か国・地域から70名以上受け入れており、大学としても彼らと日本人学生との交流を促進しています。

くわしくはこちらのサイトをご覧ください→愛知県立大学国際交流室
http://www.bur.aichi-pu.ac.jp/international/education_abroad/index.html

さて、留学したり国内で外国人と交流すると、相手のお国のことを尋ねたり文化や考え方に触れることになりますが、当然相手から尋ねられもします。「日本はどんな国?愛知ってどんなところ?」と。

愛知を紹介するとなると何と紹介しますか?
トヨタ自動車? 名古屋城?
私は常々愛知にゆかりのある偉人、「鈴木正三」と「浅野祥雲」の二人をもっと世に知らしめるべきだと思っています。

今回紹介する本に「鈴木正三」が出て来ます。
ご存知ですか、鈴木正三?
豊田市出身の徳川に使える武士でしたが、僧に転じ民衆のために生活に役立つ新しい仏教の教えを説いた人物です。
この本での紹介のされ方がすごい。マックス・ウェーバーが近代資本主義の推進力とした「プロテスタンティズムの職業倫理」とほぼ同じ考えを本に著した人物と書かれています。
しかも鈴木正三が活動していたのは江戸時代初期、マックス・ウェーバーが生きた時代より300年前です。
井原西鶴にも影響を与えた仮名草子の作者として国文学関係者の間では名が知られていた鈴木正三を、西洋と同じ職業倫理を唱えた思想家として紹介しています。

奈良の大仏を作った行基、文豪太宰治、西洋の大哲学者ルソーやカントらと並んで鈴木正三が出てきます。
どうです、この本を読んで愛知県にもこんなすごい人がいたんだよと紹介したくなりませんか?

(長久手キャンパス図書館 松森)

 

『アメリカ国立公園 : 絶景・大自然の旅』 [請求記号:295.3/Ma35]

 牧野森太郎著 産業編集センター 2013年

 アメリカの国立公園の多くは都市部からかなり離れたところにあり、また、あまりに広大なので、出来ることならキャンプをしながらじっくり時間をかけて旅をしたいものです。そんな理想的な旅を実現させたのがこの本の著者で、"自分のクルマでたどり着き、キャンプサイトを設営し、自分の足で歩きまわった"15か所の国立公園等を紹介しています。写真も素晴らしく、いつか行ってみたいところだらけで、ウラヤマシイ限りです。その季節ならではの失敗談などがリアルで、どの季節に行けばよりその国立公園を楽しめるのか、決めるのに役立ちそうです。
 そして、この本を読むと"レンジャー"に憧れるでしょう。仕事としてこんな大自然の中で過ごせるのですから。p.94-95のあたりにそのカッコよさが紹介されています。
 National Park Service(http://www.nps.gov/index.htm)によると、約2万人のレンジャーが、ガイドをはじめ園内の保全、環境調査、広報活動、犯罪の取り締まりなどなど、多様な任務にあたっています。ちなみに、生物学や植物学に限らず、考古学、建築、教育、歴史など様々な分野の専門知識を修めた連邦政府の正規職員です。この本を読んでレンジャーになりたくなった方は、アメリカを目指すというのもアリかもしれません。
 学生のみなさんは試験が終われば春休みということで、今のうちに旅に出ましょう!後で必ず後悔しますよ。「学生のうちにもっと旅をしておけばよかったな…」って。リベラルアーツコーナーには多数の国の『地球の歩き方』を揃えています。こちらで下調べをして、ぜひ旅へ!

(長久手キャンパス図書館 大石)


 

『はじめての和装本 : 身近な道具で作れます』 [請求記号:022.8/F72]

 府川次男著 文化出版局 2003年

 自分の手で本を作ってみたい、と思ったことがある方は多いのではないでしょうか。
 そんな方におすすめしたいのが本書です。製本と聞くと何やら難し気な印象がありますが、和装本作りは身近にある素材と道具で手軽にできるということが分かります。
 綴じるものは、何も小難しい論文や長篇小説の原稿である必要はありません。例えば、いただいたメッセージカードや、ポストカード、新聞の切り抜き、端切れや記念切手のコレクションなど。そういったものがあなたの手元にもありませんか。ノートに貼っていく、ファイルに綴じていくといった方法ももちろん良いですが、コレクションを収める冊子を手作りしてみるのも楽しそう、と本書を読めば思うはずです。世界に一つだけの本に仕立てれば、自慢のコレクションや思い出の品にもっと愛着が湧くことでしょう。
 さて、コレクションを楽しく保存するというのとはちょっと方向性が違いますが、私も学生の頃、本書の和綴じのやり方を見ながら、授業のレジュメや卒論作成のために集めた資料をせっせと製本していた記憶があります。といっても私は基本的な四ツ目綴じしかできなかったので、本当にただプリントの束を冊子の形に整える、という程度でした。それでも、自分の手で製本してみると、不思議と大事にしたくなるものです。
 ただ、私の場合、製本したところで満足してしまい、資料の中身をろくろく読まない、ということがしばしばありました。これから論文のために本格的な資料集めに取りかかる学生さんもいらっしゃるかと思いますが、資料の整理は、内容を一読してから行うことをおすすめします。

(長久手キャンパス図書館 井上)