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2016年10月の5冊


 

 

『犬はあなたをこう見ている : 最新の動物行動学でわかる犬の心理』 [受入準備中]

 J・ブラッドショー著 河出書房新社(河出文庫) 2016年

 原書は、"Dog Sense"の表題で2011年に刊行されている「犬」をめぐる最新の動物行動学や動物育種学の知見を集めた一般普及書です。昨年7月の「今月の5冊」で取り上げて以来、2冊目の「犬の本」です。何万年か前にオオカミから別れてきた犬の祖先たちの話を出発点にして、今目にする犬たちの行動特性やしつけのこと、「考えていること」、「感じていること」、今から将来にわたる「純血種」の遺伝的問題など、身近に目にする犬のことを、わかりやすい翻訳文で紹介してくれています。まさに「犬のきもち」が科学的にわかる本ということでしょうか。私たちは、ついつい犬を擬人化して捉え、日常的な知識や生活感覚から、過大にも過小にも評価して、客観的な「犬」の姿を捉えていないかもしれません。我が家で飼っている犬は、ラフ・コリーという犬種で、大きいのが2頭家の中でゴロゴロしていますが、やはり、つい擬人化して捉えがちです。主観的にはそれでもよいのだと思っていますし、その方が犬と「わかり合えて」、楽しい時間を過ごすことができます。もちろん、科学的に犬を捉えることで、病気予防や正しいしつけ方に役立つことは事実ですし、そのことが人にも犬にとっても優しいこと、安心して暮らせることに繋がると思います。でも、「きもち」が通うという主観もまた、人と犬との共存にとって欠くことのできない要素で、本書はそうした人と犬の関係を改めて考えさせてくれます。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『明日のあなたへ : 愛するとは許すこと』 [受入準備中]

 三浦綾子著 集英社(集英社文庫) 1996年

 「九つまで満ち足りていて、十のうち一つだけしか不満がない時でさえ、人間はまずその不満を真っ先に口から出し、文句を言いつづけるものなのだ。自分を顧みてつくづくそう思う。なぜわたしたちは不満を後まわしにし、感謝すべきことを先に言わないのだろう。」扉の文章です。本当にそうだなあと納得してしまいます。著者は『氷点』で有名な三浦綾子氏です。『氷点』はまさに「許し」がテーマです。その三浦さんが、許しや愛をどのように語るのだろうと強く引き付けられて手に取った本です。三浦さんは青春時代から37歳まで結核で療養していました。その殆どがベッドに臥(ね)たっきりでした。虚無的になっていたときにキリスト教に出会い病床で洗礼を受けてクリスチャンになりました。三浦さんは結核治癒後も癌に罹患するなど、健康面では大変な経験を重ねたのですが、数ページごとにまとめられた各章の言葉は温かく、ご自分の経験をとおして、わかりやすい言葉で、愛すること、許すこと、生きること、などについて語られています。冒頭の文章でもわかるように、一方的に正しさを押し付けるわけではなく、ご自身のことも静かに見つめ織り込みながら、話しかけるように綴られる言葉は、素直にしみわたってきます。「明日のあなたへ」の書名どおり、若い皆さんが人生の様々な事柄に出会ったときの指針となる書だと思います。例えば、自殺、不倫、なども取り上げ、真の自由、愛のあり方、死にたくなる時、許すということなど、深いテーマに迫ります。関心がある章を拾い読みするのもありです。ぜひ、手にとってみてください。

(学術研究情報センター副センター長 小松万喜子(看護学部看護学科))

 

『歌謡曲の構造』 [請求記号:767//180]

 小泉文夫著 冬樹社 1984年

 春に北島三郎さんの名曲『まつり』のワンフレーズを、7万人の観衆の中、ご本人と一緒に口ずさむ機会に恵まれました。
 演歌ってこういった雰囲気に合うんだなーと思った時に頭に浮かんだのがこの本です。

 現在の日本の音楽は、明治に入ってきた西洋音楽に基づきドレミファソラシドの7音階で作られます。
 けれども、著者小泉文夫は、それまで日本はずっと5音階でやってきた。だから5音階の曲の方が日本人の心に沁みると訴えました。
 ドレミファソラシドから4番目のファと7番目のシを抜いたドレミソラで作る四七抜き長音階(お座敷小唄や北酒場など)、短調のラシドレミファソからレとソを抜いた5音で作る四七抜き短音階(東京だヨおっ母さんや津軽海峡冬景色など)、同じくラシドレミファソからシとファを抜いた5音で作る二六抜き短音階(リンゴ追分や与作など)を例に日本人のスピリッツを熱く語ります。

 四七抜き短音階は日本古来の伝統的音階、都節音階や陰音階に似ている。「畏しこみ畏しこみ・・・」と神主さんが神様を呼ぶ祝詞はポリネシアの言い回しに似ている。二六抜き短音階は平安時代の風俗歌やわらべうたと同じ音階でトルコやハンガリーの音楽にも繋がるものがあるといった文化論、民族論に話は発展していきます。
 大衆音楽恐るべしです。

 この本は1984年に出た本です。では最近の曲はどうなのか?
 きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」が四七抜き長音階、「にんじゃりばんばん」が四七抜き短音階。
 THE BOOMの「島唄」はニ六抜き音階。
 これはニ六抜き長音階でレとラが抜けます。ニ六抜き長音階のことを琉球音階と呼ぶそうです。楽器が手元にある方はちょっと演奏してみてください。
 あら不思議、レとラを抜いて演奏すると確かに沖縄の音楽っぽく聞こえます。
 深いですね。

(長久手キャンパス図書館 松森)

 

『竹取物語 . 伊勢物語 . 堤中納言物語 . 土左日記 . 更級日記』 [請求記号:918/N71/3]

 森見登美彦訳 . 川上弘美訳 . 中島京子訳 . 堀江敏幸訳 . 江國香織訳 河出書房新社(日本文学全集 ; 03)2016年

 カラフルな表紙が目を引く『日本文学全集』が、図書館の一郭に並んでいることにお気づきでしょうか。現在刊行中の、池澤夏樹個人編集の『日本文学全集』です。「文学全集」というと、渋い装丁の重たそうな本がズラッと書架に並び、何となく近寄りがたいイメージですが、このシリーズなら誰でも気軽に手にとれるはず。
 中でもこの『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』は、古典文学の名著の現代語訳を、人気作家が手掛けたユニークな1冊です。みなさんのお気に入りの作家さんの名前はあるでしょうか?
 内容は「古典の現代語訳」ですが、作家の個性が現れていて、まるでオリジナルの作品を読んでいるように楽しく読めます。古典は苦手という人でも、好きな作家さんの文章ならさくさく読み進められるかも…。
 それから、作品だけでなく、巻末の訳者あとがきにもぜひ注目してください。訳者と作品の意外なつながりや、現代語訳を手がけるにあたっての作家の思いなどがつづられています。
 そして、この現代語訳を読んだら、古文でももう一度読んでみてください。今まで敬遠していた古典文学作品も、身近に感じられることと思います。

(長久手キャンパス図書館 井上)


 

『日本建築集中講義』 [請求記号:521.8/F62]

 藤森照信, 山口晃著 淡交社 2013年

 タイトルだけ見るとちょっと小難しそうな印象を持ちますが、建築について何も知らない私でも楽しく読めた本です。建築物の写真より山口さんのマンガの方がスペース多いのでは?という構成が、この本のユルさを物語っています。山口さんのイケメン&お茶目ぶりを堪能しつつ、藤森先生の肩の力が抜けた解説と、豪快&マイペースな振る舞いに圧倒されながら、講義が進んでいきます。「お寺なんて全部一緒」くらいに思っていた私が、「今度京都に行くので、西本願寺を見に行こう。角屋にも行ってみたいな…。」くらいは思えるようになりました。
 日本や外国で建築物を見ても、私の感想は、いつも「綺麗だね〜(終わり)。」「大きいね〜(終わり)。」でした。"見る目"が無いので何が面白いのかがわからないのです。そこで、この本の中のお二人の"見る目"をお借りして、そういうところを見るんだな、こういう背景を考えて想像を膨らませるんだな、ああいう感想を持ってもいいんだな、と、感じてみることにしました。よく知らない物事については、まずはその分野に詳しい人の視点を真似してみる。そうすれば、いずれは自分自身の感性や経験や知識による"見る目"が育つ、かもしれません。
 閑谷学校の講堂の花頭窓を見て、藤森先生が『ああいう障子なら使ってもいいかな。僕は障子・竹・畳は使わない。というのも…』と、ご自分の作品に障子・竹・畳を使わない理由をお話しされています(P.161)。可笑しいです。そんな先生が設計したのが先ごろオープンした多治見のモザイクタイルミュージアムです。他にもジブリ?みたいな高過庵(P.222)とか。藤森先生、かなり素敵です。

(長久手キャンパス図書館 大石)