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2016年11月の5冊


 

 

『科学という考え方 : アインシュタインの宇宙』 [請求記号:080/C64/2375]

 酒井邦嘉著. 中央公論新社, 2016 (中公新書:2375)

 この本の著者は、脳科学を専門とする東大の研究者で、教養科目としての「科学論」あるいは「科学史論」をベースに本書を執筆しています。著者自身は「ことば」という人間的な営みを、脳科学の立場から自然科学的に解明する研究をされています。主観と客観にまたがる言語意識の領域を専門とされるだけあって、本書でも科学のあり方を「人間の営み」としてどのように位置づけていくのかという哲学的な問題意識が見て取れます。そこでは科学的な命題の立て方の議論から始まり、天体運動の解明を通じた物理法則の認識を、ケプラーからニュートンを経てアインシュタインの考え方へと時間軸に沿う形で紹介しています。その中で著者は、寺田寅彦が1933(昭和8)年に発表した随筆「科学者とあたま」から以下のような言葉を引用して、科学、そして、科学者のあり方を見つめようとしています。「怪我を恐れる人は大工にはなれない。失敗を怖がる人は科学者にはなれない。科学もやはり頭の悪い命知らずの死骸の山の上に築かれた殿堂であり、血の河の畔に咲いた花園である。」この言葉は「科学」や「研究」のあり方にとどまらず、人間一般の生き方論や仕事観にも直截的に響く警句と言えます。こうした「科学論」や哲学的な話は、一般の読者にとってなかなか敷居が高く、寄りつけないところがありそうですが、秋の夜長に胡桃の殻でも割るように、少し堅いテーマに接してみるのはどうでしょうか。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『平和を創る心理学 : 私とあなたと世界ぜんたいの幸福を求めて, 第2版』 [請求記号:319.8/H51]

 心理科学研究会編. ナカニシヤ出版, 2014

 本書はタイトルのとおり平和に貢献する心理学のあり方を示した(あるいは模索した)本です。「第2版」ということから分かるように、これは「初版」からの続編でもあります。「初版」は2001年に刊行され、その10年後に時代の変化に応えるために「第2版」の出版計画が立ち上がり、3年の月日をかけて完成したのが「第2版」です。この「第2版」と合わせて、ぜひ「初版」も手に取ってみてください。
 心理学は日常生活の中に起こる様々な心理(発達心理、性格、心の悩みなど)を解明する極めて身近な学問ですが、それと同時に(どの学問領域にもあり得ることですが)、科学や学問はひとたびその時代の権力者が乱用しようとすると、たちまち戦争の道具として使われてしまう危険をはらんでいます。戦闘機や核兵器の研究技術開発のみならず、心理学もまた例外ではありません。第2次世界大戦や中東戦争のときも、敵の戦意の喪失、自軍の兵士の心理的高揚、いわゆる心理作戦と呼ばれるような戦術など心理学の多様な面が戦争に活用されてきた歴史は否定できません。
 人文・社会科学、自然科学全分野の研究者が集う日本の代表機関である「日本学術会議」は「科学者は、新たな知識の発見や技術の開発によって公共の福祉の増進に寄与するとともに、地球環境と人類社会の調和ある平和的な発展に貢献する」と提言し、科学者の戦争への協力に反対しています。近年、民間企業、国家機関や防衛庁、米軍などとの産軍官学の軍事研究によって研究費を調達しようとする大学がありますが、大学の研究費が削減されていく中で、警戒しなければならない危険な動向が進んでいます。
 このような社会情勢の中、改めて、心理学者が平和に貢献するために何ができるのかを果敢に問いかけているのが本書です。犯罪・非行と暴力、メディアと暴力、暴力・紛争の解決、平和教育など様々な観点から「平和心理学」を構築しようとする新たな試みが描かれています。

(堀尾良弘(教育福祉学部教育発達学科)

 

『身体はどう変わってきたか : 16世紀から現代まで』 [請求記号:204/C88]

 アラン・コルバン [ほか] 著 冬樹社 1984年

 身体というのは不思議なものです。わたしたちが直接自分の身体を見ることができるのは、手や足など身体の一部だけです。何かに映さないと、上から下まで一度に見ることはできません。まして背中となると自分自身なのに、じっくり見ることは困難です。そして、いつも確かにここにあるのに、ここにある、と意識することはあまりありません。"自分"というものを認識するとき、わたしたちは身体がどのような状態であるか、ということはあまり考慮に入れません。自分の身体を意識するのは、体調不良や怪我で普段通りに身体が動かないときが多いように感じます。あまりにも自然に手足を動かし、難なく作業をこなす身体は意識されることがありません。そして、目に見えない、不安定なこころ・思考の働きを感じて自分というものを認識することのほうが多いように思われます。
 本書では歴史や文学において、こころに比べ語られることの多くなかった身体が諸世紀を通じてどのように変化してきたかについて述べられています。そして"まえがき"にあるように「『身体の歴史』(全3巻)[請求記号:230.5/Sh69]へのいざないを意図して編まれた著作」です。併せて読んでいただければ、身体を語る方法が多岐にわたること、また歴史的にどのように扱われ変化してきたか理解が深まることと思います。

(長久手キャンパス図書館 須原)

 

『モノのしくみがわかる本 : オールカラー : 生活家電や乗り物からハイテク技術まで』 [請求記号:530/Mo35]

 科学技術研究倶楽部編. 学研パブリッシング/学研マーケティング (発売), 2013

図書館は不思議な空間だなと思います。
文学の本があると思いきや、科学、美術などの本もあり、蔵書数に差はありますがあらゆる分野を見渡せる空間です。さらにリベラルアーツコーナーは、その分野を知らない人でも興味がわいてくるような本が並び、少しの時間で見渡せます。そんな中、今回ご紹介するのは「モノの仕組み」です。

わたしは、体脂肪計付き体重計は、なぜ体重計にのっただけで体脂肪も計ることができるのか不思議に思いました。この本を最初に開いたページが、まさにその答えが載っていました。ほかのページをめくると、消せるボールペン、タッチパネルのしくみなど、身近でよく利用する「モノの仕組み」をあまり知りませんでした。
そして、普段何気なく使っているモノたちが、すごい発明品だなと思いました。と同時に、知らず知らずのうちに、機械やモノに使われているかもしれないと思いました。

そんな身近な仕組みを、図などを用いて分かりやすく紹介してくれる本です。

科学技術はどんどん進歩していき、仕組みを知らずとも使えます。ですが、どんな動きをするのか分かると、新しい発見があるかもしれません。
みなさんは、回転するエレベータをご存知でしょうか。

(長久手キャンパス図書館 近藤)


 

『ご冗談でしょう、ファインマンさん : ノーベル賞物理学者の自伝, 1,2』 [請求記号:289/1/403289/2/403]

 リチャード・P.ファインマン 著/大貫昌子 訳. 岩波書店, 1986

 この本は1965年にノーベル物理学賞を受賞した、科学を心底愛するR. P. ファインマン博士の自伝です。
 偉大な物理学者自ら執筆した本と聞くと、堅苦しい内容をイメージするかもしれませんが、この本は決して小難しいものではなく、1986年に出版された際、ベストセラーにもなった「ファインマンさん」のエピソード集です。
 「ファインマンさん」は科学を心底愛しています。彼は科学的な仮説を思いついたが最後、あらゆる方法でそれが正しいのか、確かめずにはいられません。常に子どものように好奇心旺盛で、気になったことは納得いくまで追求する彼の姿勢は生涯を通じて一貫しており、彼の人生をとても豊かで愉快なものにしています。
 また、その旺盛な探求心と、いたずらっ子のような遊び心から引き起こされる事件や騒動は、彼なりの理論を基にして起こしているので、ちょっと学術的な香りが漂う、一風変わった痛快なものばかりです。自宅の実験室で、あわや火事発生!(こっそり、もみ消します)かと思えば、院生時代には、夏の旅行の代わりに、専門外の生物学のゼミに「旅立つ」ことを決め、がむしゃらに専門外の勉強に励んだり。好奇心もさることながら、その行動力は脱帽ものです。
 「何にでも鼻をつっこんだうえで、どこまでいけるか、しゃにむにやってみる」という「ファインマンさん」の生き方は、物事の本質を観察することに、なによりこだわり、自分の眼で確かめようとするもので、周りの同僚や若い科学者達にも、多大な影響を与えています。彼らは「ファインマンさん」に関する著作をいくつか刊行しており、県立大学の図書館でもその多くを所蔵しています。ぜひ、「ファインマン」で愛知県立大学OPAC(オンライン蔵書目録)を検索してみてください。
 さあ、皆さんも型破りな天才の頭の中を少し覗いてみませんか。

(長久手キャンパス図書館 大塩)