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2017年2月の5冊


 

 

『図説ブダペスト都市物語』 [請求記号:234.7/W41]

 早稲田みか文/チョマ・ゲルゲイ写真. 河出書房新社, 2001 (ふくろうの本)

 昨年度は海外調査の経験の中からトルコに関する本を紹介しました。今回は同様の趣旨からハンガリーを取り上げた本を紹介します。いまのハンガリーは中欧にある面積9.3万km²、人口1,000万弱の小さな国ですが、ハンガリー人(マジャール人)はウラル語族に属するアジア系の民族の血をひいています。19世紀後半から20世紀前半にかけてのオーストリア・ハンガリー二重帝国の時代にはいまの数倍の版図をもつ大きな国でした。その時代に近代都市として整備され発達したのが首都のブダペスト(現地語ではブダペシュト)です。この町は人口200万前後の大都市で町の真ん中をドナウ川が南北に流れ、「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街です。しかし、ハンガリーの波瀾に充ちた歴史を象徴するように、ブダペストも数奇な運命を辿ってきました。16〜17世紀にはオスマン帝国に支配下に入ってイスラム化しましたし、20世紀後半にはハンガリー動乱での市民の抵抗にもかかわらず、ソビエト連邦の支配下で社会主義化し、「東欧圏」に組み込まれました。しかし、それぞれの時代の中で東西の文化が交流する中、この町には市民生活や芸術文化に独特の香りが醸し出され、歴史の重厚さと文化の香りが綯い交ぜになった雰囲気が漂っています。一度訪れてみてほしい町の一つですが、この本はそうしたブダペストの町やハンガリーの国の様子を、多くの写真や図版から楽しく語りかけてくれています。

(学術研究情報センター長 中島茂(日本文化学部歴史文化学科))

 

『コーピングのやさしい教科書 : 折れない心がメモ1枚でできる』 [受入中]

 伊藤 絵美著. 宝島社, 2017

 あなたは、周囲の人との関係でモヤモヤしたり…、課題に取り組もうと思っても気持ちが付いていかなかったり…、心が折れそうなとき、どうしていますか?周囲をみると、自分にはストレスフルな課題なのに、平然と乗り越えていく人もいますよね。例えば、面接試験の前にストレスがお腹にくる人もいれば、冗談を言う余裕がある人もいます。あなた自身のなかでも、類似の事柄を、ストレスに感じるときと感じないときがあるのではないでしょうか。ストレスに強くなったら、きっともっと生きやすいと思います。この本は、そんなストレスにうまく対処する方法を教えてくれる本です。
 ストレスは、厳密にいうと、その原因やきっかけとなる人間関係や環境などの「ストレッサー」と、ストレッサーによる「ストレス反応(心や体の反応)」に分かれます。生きている限り、人間関係や、騒音や寒暖などの環境によるストレッサーが無くなることはありませんが、上手く対処できれば、今よりはもう少しストレスに強いあなたになれるはず。ストレスへの対処法を「コーピング」といい、コーピングにもいろいろな方法があります。この本では自分のストレスを知る方法や、ストレスから自分を守るコーピングのレパートリーの増やし方が紹介されています。ちょっと難しそうに思うかもしれませんが、伊藤先生は精神科のクリニックや民間企業などでのメンタルヘルスやカウンセリングの豊富な経験から、気軽に続けられるストレス対処法をわかりやすく説明してくれます。自分のストレス軽減だけでなく、カウンセリングに興味のある人にもお薦めです。

(学術研究情報センター副センター長 小松万喜子(看護学部看護学科))

 

『伝わるデザインの基本 : よい資料を作るためのレイアウトのルール : 学校や会社では教えてくれない!?』
 [請求記号:021.4/Ta33]

 高橋佑磨, 片山なつ著. 技術評論社, 2014

たまたまポスターを作らなくてはいけなくなった。
プレゼンを行うことになりパワーポイントで資料を作らなくてはいけなくなった。
なんてことが起きるでしょう。
いざ作り始めると疑問続出。
どんな書体がいいんだろう?
字の大きさは?
和文と欧文が混ざる文章なんだけど。
写真の上に文字を置きたいんだけど、見にくくて読めない。
行間が・・・、文字間が・・・、改行が・・・
図やグラフの収まりが悪いよな〜
全体のレイアウトこれでいいのかな?
配色これでいいのかな?
何かやろうとするたびに行き詰まり、ちっとも前に進まない。
もっと勉強しておけばよかった。コツやポイントを教えてくれる本はないのかな?
と思ったりするでしょう。

そんな思いに応えてくれる本です。
上記の疑問には全て応えてくれます。
デザインにはひと通りのルールがあり、この本は「伝える」という趣旨でそれを説明してくれます。
そしてこの本のおもしろいところは、劇的ビフォーアフターではありませんが、ところどころに変更前、変更後の例を並べてくれているところで、視覚的に効果を理解することができます。
文字で読んでも今一つピンと来ないことが、並べたポスターを見れば一目瞭然。
ちょっと修正するだけでずいぶん印象が変わるということが実感できます。
資料作りで困った時に、ぜひ一度読んでみてください。

(長久手キャンパス図書館 松森)

 

『獣の奏者, 1〜4、外伝』 [請求記号:913.6/U36/1〜4、#]

 上橋菜穂子作. 講談社, 2006-2010

 一度読んだ本は読み返さないという人もいると思いますが、私は、好きな本ならミステリーであろうとファンタジーであろうと何度でも読み返してしまうタイプです。上橋菜穂子さんの『獣の奏者』シリーズもその一つです。
 私の場合は、一度読んだ本だけれど何となく手に取って、気がついたら読みふけっていたということがしばしばですが、時には、ただ読み返すのではなく、テーマを決め、その場面や描写に注目して、もう一度じっくり読んでみるというのも面白いのではないでしょうか。
 例えば、物語に登場する食べ物や料理。『獣の奏者』には、料理名こそ書かれないことが多いものの、おいしそうな食べ物がたくさん登場します。中でも私が好きな場面は、エリンが蜂飼いのジョウンおじさんに助けられ、目を覚ましたあとで朝餉を出される場面です。

手渡された、温かい木椀の中身を見て、エリンはびっくりした。 木椀に入っていたのは、お米のご飯ではなかった。ぱさぱさに乾いたお餅のようなものを香ばしく焼いて、それがお乳につけてあるのだ。その上に、たっぷりと黄金色の蜂蜜がかかっていた。お乳と蜂蜜が滴っているお餅をつまみあげて頬ばり、噛みしめたとたん、口の中にじゅうっと甘く香ばしい味が広がった。(『T.闘蛇編』より)

 いかがですか?おいしそう!と思って実際に食べてみたくなったのは私だけではないはずです。
 食事の場面というのは、物語の展開とも結びついています。家族がそろって食卓を囲むあたたかい場面か、緊迫した状況の中での束の間の休息か、あるいは、重大な出来事の前夜か。料理の種類、一緒に食べている人物など、食事風景一つとっても、物語の読み方は深まることと思います。『獣の奏者』を何度も読んでいる人も、これから読む人も、ぜひ注目してみてください。

(長久手キャンパス図書館 井上)


 

『マダム・イン・ニューヨーク : 初めてのニューヨーク 人生の輝きを取り戻す旅』 [請求記号:DVD//1367]

 ガウリ・シンデー監督・脚本. アミューズソフト(発売・販売), 2014

 英語が出来なくて家族に馬鹿にされ、深く傷ついたインドの女性シャシは、姪の結婚式のため訪れたニューヨークで、「4週間で英語が話せる」英会話学校へ通い始めます。英語で電話をかけるドキドキ、英語を話せなかった時の恥ずかしさと悔しさ、通じた時の嬉しさと安堵、英語が母国語でない者同士の連帯感、等々。英会話が苦手な私としては「そうそう、あるある!」の連発です。だって、ニューヨークで私が訪れたマクドナルドの店員さんはものすごく怖かったですから!ただ、「4週間で英語が話せる」は流石に『 what a con ! 』だと思います。
 学生の皆さんには、何かコンプレックスに感じていることを克服する勇気とか、新しいことにチャレンジする時のドキドキとかに共感してもらえると思います。
 また、女性の皆さんにとってはモヤモヤするところも有ると思います。シャシの夫も娘もヒドイ言い様なのです。馬鹿にされ、感謝されなくても尽くしてあげて当然?女性は料理さえしていればいい?妻は夫より劣っている?決してインドという国だからこそではない、世界中どこにでもある"家族の問題"です。もちろん家族全員が納得して満足しているなら、誰も干渉すべきでない問題でもあります。ただ、シャシはそうではなかったのです。
 新しいことにチャレンジし自分を変えることで、シャシは人間として、女性として、自信を取り戻しました。そんなシャシが選んだのは、今までの生活を捨てて新しい世界に飛び込むことでしょうか、それとも…?姪の結婚式でのスピーチにその答えがあります。個人的には違う結末を期待する気持ちもちょっぴりあったのですけど。『 Nobody can help you better than you 』という言葉が身に沁みます。結局、そうなんですよね。
 インド映画特有のダンスシーンはかなり少なめですので、これまでインド映画が苦手だった人も大丈夫です。見終わると清々しい気分になり、なんだかとにかく頑張ろう!と思える映画です。

(長久手キャンパス図書館 大石)