和歌文学会第六十七回大会開催連携愛知県立大学所蔵貴重書展示「和歌の世界」イメージ 和歌文学会第六十七回大会開催連携愛知県立大学所蔵貴重書展示「和歌の世界」タイトル

和歌文学会第67回大会の開催に合わせ、愛知県立大学が所蔵する貴重書の中から、
和歌の魅力に触れることができる資料をWeb上で展示します。




和歌文学会

愛知県立大学貴重書コレクション

学内向け

二次的利用


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古今集と新古今集


古今和歌集(貴911.2//1202)貞応二年本

縦22.4cm×横15.3cm 列帖装一帖。 伝称筆者頓阿(守村印極め有り)。桐箱入、分銅繋ぎ双鳥丸織文紺地包み表紙、題簽なし。見返しは金地に銀散らし雲霞引き、本文料紙、斐楮交漉。一面序九行書、和歌本文十行書、十括百六十一丁。仮名序、和歌本文(朱庵点、声点あり)、墨滅歌、真名序の後、末尾に貞応二年(1223)七月二十二日の定家識語を持つ。書写奥書はない。二条家流の古今伝授に用いられ、中世以降に広く流布したいわゆる貞応二年本である。ただし、貞応二年本系統ではあるが、嘉禄二年本との相違箇所275、396、584、656、1027番歌で、嘉禄二年本の表現を注記もしくは採用しており、冷泉家時雨亭文庫の為家自筆奥書貞応二年本にない勘物も書き込まれた伝本である。

古今和歌集(貞応二年本)
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古今和歌集(貴911.2//1203)嘉禄二年本

縦24.0p×横15.8cm 列帖装一帖。〔室町〕写 桐箱入、雷文地桐唐草模様金襴包み表紙、題簽なし。見返しは金泥地、本文料紙、斐楮交漉。一面九行書。十二括、百八十丁。物名巻に綴じ誤りによる二丁分の錯簡がある。仮名序、和歌本文、墨滅歌の後、嘉禄二年(1226)四月九日の定家識語、ついで「本云此本付属大夫為相/于時頽齢六十五((ママ))桑門融覚判」と冷泉為相に伝える旨の為家の識語があり、その後に真名序を写す。書写奥書はない。嘉禄二年本系統の奥書を持つが、秋下までは貞応二年本系統の本文との相違箇所において貞応二年本の表現を持つ。

古今和歌集(嘉禄二年本)
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新古今和歌集(貴911.2//481)伝周興筆本

縦24.2p×横17.0p 列帖装、上下二帖。 伝称筆者周興 〔室町中〜後期〕写。 漆塗り紅色内箱と桐外箱があり、外箱題「新古今集 周興筆」。表紙は藍地に金で上巻は秋草模様、下巻は竹に虎を描く。表見返しは朱網目模様の金・銀引紙を斜めに二分して貼り、銀側は雷文繋ぎ地に秋草花、蝶を描く。題簽は朱色に金・黒の雲模様。本文料紙、斐紙。一面九行、和歌一首一行書。上冊百六十四丁、うち遊紙前一後三。下冊百四十七丁、うち遊紙前後各一。下冊奥書脇に二種類の極めを貼付。「周興律師 琴山印」、「堯孝門弟 周興筆 新古今集上下巻 了雪印」。上冊に真名序、仮名序、巻十まで、下冊に巻十一から巻二十までが写されている。本文は第三類本である。伝称筆者の周興は、「法勝寺(法性寺)上人律師堯孝門弟也〈連歌師〉」『顕伝明名録』と記された、堯孝の門人。歌書を多く書写し、同一筆者と思われるものに、目白大学本『新古今和歌集』がある。本学本は、奥書(本文と別筆)によれば、二度の校合及び、肖柏門人の連歌師宗訊所持本との校合がなされており、本文中にはすり消しなどの訂正箇所がかなりある。

新古今和歌集
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新古今和歌集聞書(貴911.2//1218)常縁原撰本

縦20.3cm×横15.0cm 折紙列帖装、一帖。 〔江戸初期〕写。桐箱入、箱書「新古今和歌聞書」。縹色地に金で小草花を描いた表紙、左上に題箋「新古今和歌聞書」、内題「新古今和歌集聞書」。見返しは金銀切箔ちらし、本文料紙は斐楮交漉。一面十三行書、和歌は二から三字下げ、一首二行書。六括、百二丁。東常縁(1401〜1484)による『新古今集』の注釈書で、『新古今集』の本文と歌注を記す。二百首が抄出され、文明二年(1470)以前に成立した(福岡市美術館蔵黒田家旧蔵本)。後に細川幽斎による増補本が、広く流布したため、常縁原撰本(「前抄」)とも呼ばれる。本学本は、百九十五首を有し、末尾に養暹所持幽斎筆本を転写した中院通勝(也足軒素然)の文禄五年六月の識語、慶長二年霜月書写の識語がある。朱で巻名を補記し、注内の物語・歌集名、和歌作者名に朱引、和歌に朱の庵点を付す。

新古今和歌集聞書
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新古今和歌集聞書(911.2//1217)細川幽斎増補本

縦26.4cm×横18.5cm 袋綴、四冊。江戸期版本(無刊記本)、後印。外題は全て貼題箋「新板 新古今和哥集抄」(系図・二・三・四)。 黒地二重亀甲繋ぎ表紙、本文料紙は楮紙。 第一冊六十四丁、第二冊三十六丁、第三冊四十六丁、第四冊六十六丁、計二百十二丁。四周単辺・無界十行二十字前後、21.5cm×16.3cm。常縁の記した新古今集の注釈に、細川幽斎が増補した書。慶長二年(1597)以前の成立。第一冊に序・目録、続いて新古今集各巻から抄出した歌と注を記し、第四冊末尾に、東常縁の本奥書、文明二年三月の宗幸による「証本」とすべきことを示した識語、細川幽斎の慶長二年の書写識語を付す。幽斎の増補部分は、猪苗代兼載の説、清原宣賢が拠る上冷泉家説等を取り込んだ『新古今和歌集註』を典拠としている。刊本としては、無刊記本の他に貞享四年(1687)版本、同板の宝永八年(1711)・寛政四年(1792)本がある。

新古今和歌集聞書
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名所歌と秀歌撰


詠歌方輿勝覧(貴911.2//1453)雑纂本名所歌集

縦14.5p×横22.0p 袋綴、一冊。〔江戸中〜後期〕写。 慶長十六年(1611)以降後陽成天皇(後陽成院)撰。後補渋引き表紙、表紙左に題簽「□歌方輿勝覧」。本文料紙は楮紙。墨付二百三十一丁、遊紙一。名所を取り上げ、国名と証歌を示した名所歌集。自序、名所目録(三百項目)、名所、追加名所(二十八項目)の順に、元は三冊本であったものをある時点で合冊し、さらに裏打ち補修した追加部分も合冊している。収載歌は多く『歌枕名寄』による。和歌内の地名に朱の傍線、表現の鍵となる重要な語句に一文字ごとの朱傍線、雪・月・花に朱の圏点を付す。全冊虫損が著しい。後陽成天皇は、慶長二年(1597)、本書を国別に作成し、後に雑纂へ、そしてイロハ順に編纂し直した。雑纂形態は自序から慶長十六年(1611)以降の編纂となるが、本学の書は雑纂の段階の写本。表紙に西荘文庫印があり、小津桂窓旧蔵本である。小津桂窓(1804〜1858)は、伊勢松坂の豪商で、国学者であり、蔵書家としても著名、馬琴との交流が知られている。

詠歌方輿勝覧
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勅撰名所和歌抜書(911.2//36)いろは順名所歌集

縦26.3p×横20.0cm。袋綴、一冊。〔江戸中期〕写。永正三年(1506) 宗碩編。後補灰地表紙、内題「勅撰名所和歌抜書上」。墨付七十一丁。連歌師宗碩(1474〜1533)編纂『勅撰名所和歌抄出』(上下二冊)の一伝本。『勅撰名所和歌抄出』は、万葉集及び勅撰集などから名所和歌を歌枕ごとに抜き示した書。南北朝期に成立した『勅撰名所和歌要抄』を主たる典拠として、和歌をいろは順に抄出し改編した。『十四代集歌枕』『歌枕名寄』からの和歌の補入も考えられている。三条西実隆による下巻奥書が記すように、連歌寄合の語句選択の一助として編纂され学ばれた書。本学本は、上下二冊本のうちの上冊のみで、目録と、目録最初の「山」門から三十番「水」門までの山類と水辺の項目の名所を持つ。地名の説明が簡略化されており、「山」の項目でわずかに歌語の覚えが記され、国名の不審な名所「生駒山」では、根拠となる歌が『伊勢物語』から増補されている等の特徴を持つ。

勅撰名所和歌抜書
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名所風物抄(貴911.2//1444)いろは順名所歌集

縦30.2cm×横20.6cm 大本。〔室町末から江戸初期作か〕、〔江戸初期〕写。孤本、袋綴六冊(一目録、二(伊行)、三(良行)、四(ヤ行)、五(阿行)、六(恵行)、「ち」から「な」行欠、二冊の欠巻となろう)。藍色表紙、貼題箋・内題共に「名所風物抄」。本文料紙、斐楮交漉。全冊一筆、歌の主要語句に朱傍線(五を除く)。現存する冊子に奥書は無い。いろは順に配列した名所ごとに『万葉集』、二十一代集その他の和歌の作例を示す、撰者不明の名所歌集。名所数は目録では計二千五百七十九項目に及ぶ。名所の所在地が複数ある場合、その所在を『五代集歌枕』・『八雲御抄』・『勅撰名所抄(集)』・『方角抄』・『歌枕名寄』などの引用で根拠を示し論ずる。例歌の掲出は、多く『歌枕名寄』からであり、また『夫木和歌抄』『題林愚抄』も使用している。集付の散佚歌集名の一部、『明玉(集)』『散梅集』『懐中抄』などは『歌枕名寄』の詞書、左注等に依る。例歌の配列について、「松葉」の配列を念頭に置いた私見が歌列中に置かれており『松葉名所和歌集』の成立(万治三年(1660))以後の書写である。集付の散佚歌集にある『方与集』『七帖抄』は『松葉名所和歌集』にも引かれ、参照した文献も両歌集は似通っている。

名所風物抄
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和歌題林抄(911.2//438)初学者向け歌学書

縦26.6cm×横18.4cm 南北朝期歌学書、大本。〔江戸期〕無刊記版本。袋綴上下二冊。縹色表紙卍繋ぎ地牡丹唐草模様、四周単辺・無界十一行二十三字前後、21.0p×16.4cm。本文料紙は楮紙。外題、内題共に「和歌題林抄」。上冊五十一丁、下冊四十二丁、和歌一首一字下げ一行書き。各冊一丁表に「小林山/蔵書」朱印。和歌に用いる歌題を四季・恋・雑に大別してあげ、詠み方を平易に解説した書。題の下方に歌句例、解説の後に歌例をあげる。『万葉集』から『風雅集』までの勅撰集を中心として歌を選択しており、本学本は第一類本に属する刊本とみられる。歌題の趣を習得するための和歌の手引書として、初学者に多く読まれた。内容の性格上、増補が多様に行われ、序を持ち撰歌範囲を『新続古今集』までに広げ「種心秘要抄」と題した、作者を一条兼良とする本や、北村季吟による増補とされる『増補和歌題林抄』(宝永三年(1706)刊本)などがある。なお、本学は『増補和歌題林抄』も蔵している(安永六年再刻本 9112-1〜11-1439)。

和歌題林抄
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閑居抄(貴911.2//1443)秀歌撰

縦26.0p×横18.4p 列帖装、一帖。永正四年(1507)から五年(1508)牡丹花肖柏撰、慶安三年(1650)野々口立圃写。藍鼠色表紙に打ち付け書にて「閑居抄」と墨書。内題も同じ。本文料紙は楮紙。一面十行書き、和歌一首一行書き、六括、八十丁。不審紙多くあり。『古今集』から『続後撰集』までの十代の勅撰集から秀歌を抜き出し、四季・賀・哀傷・別・旅・恋・雑に部類した私撰集。総歌数千三百三十二首の歌集と推定され、本学本は千三百二十四首(八首欠)である。和歌の集付・詞書・作者名などはないが、部立・配列・歌人別の入集数から、『新古今集』や六家集歌人を重視している傾向が見て取れ、『連歌新式』(肖柏追加、文亀元年(1501))における本歌取範囲(『続後撰集』まで)と同じ集歌範囲をとることからも、和歌・連歌の実作用に作成されたと考えられる。なお、肖柏筆与四郎(宗訊)宛消息で『閑居抄』を話題にしており、肖柏周辺の連歌師間での流布がわかる。肖柏奥書を持つ仁和寺本をはじめとし、室町末期写本も複数存在するが、本学本は、野々口立圃の慶安三年の書写奥書を持ち、猪苗代兼与から連歌を学んだ立圃の事跡が知られる。

閑居抄
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